飲食店開業時の税理士はこう選ぶ!融資や節税で失敗しない税理士選び7つのポイント

飲食店開業時の税理士はこう選ぶ!融資や節税で失敗しない税理士選び7つのポイント
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溝川裕也

大阪食堂サポート会計事務所代表 溝川裕也

公認会計士、税理士、社会保険労務士、ワインエキスパート

これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、融資支援100件以上。料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。

何年も厨房で料理の腕を磨いてきたあなた。そろそろ「自分の店を持ちたい」──そんな想いが強くなっているのではないでしょうか。

創業融資や飲食店経営について調べていると、「税理士」という存在が気になっているはずです。でも、「本当に必要なの?」「誰を選べばいいの?」と迷っていませんか。

ここで、知っておいてほしい大切なことがあります。

税理士は、単なる「経理や税金の専門家」ではありません。あなたの飲食店を成功に導く、重要なチームメンバーの一人なのです。

厨房にはあなたがいて、ホールにはサービススタッフがいる。そして、経営をサポートする税理士が裏方で活躍する。料理の腕だけでは店は続きません。融資を成功させ、節税対策を提案し、経営判断をサポートしてくれる。税理士は、そんな心強いパートナーです。

私たちは、飲食店の経営支援を100件以上サポートしてきましたが、適切な税理士をチームに迎えた方は、開業後も資金繰りが安定し、手元に残るお金が大きく変わってくると実感しています。

この記事では、「最高のチームメンバーとしての税理士」を見極めるための7つのチェックポイントを実践的に解説します。良い税理士は、あなたの夢を一緒に実現してくれる存在です。「最高のチームを作る」という観点からぜひ素敵な税理士を選んでください!

目次

開業時から税理士に依頼するメリットとデメリット

開業時から税理士に依頼するメリットとデメリット
ポイント

「税理士に何が頼めて、いくらかかるのか?」を明確に把握し、依頼することが「お店の成功への投資」となるか見極めましょう。

料理人として、現場で腕を磨いてきたあなたは、これまでのキャリアで税理士に仕事を依頼した経験はほとんどないはずです。そのため、「そもそも税理士にどこまで頼めるんだろう?」と、依頼できる業務内容が曖昧かもしれません。

この章では、税理士に依頼できる具体的な業務内容を解説したうえで、依頼した場合のメリットと、費用面で知っておくべきデメリットをまとめていきます。費用対効果をしっかりと理解し、開業準備の負担を減らす賢い選択をしてください。

税理士に依頼できる業務と依頼した場合のメリット

税理士に依頼できる業務と、依頼した場合のメリットを表にまとめました。

スクロールできます
業務内容依頼できるか依頼した場合のメリット
税務相談依頼できる・税金のことを調べる手間を省いて本業に集中できる。・税金のプロである税理士に任せることで安心感を持てる
税務署への書類提出の代行依頼できる
従業員の年末調整依頼できる
確定申告依頼できる
記帳代行 (領収書などを会計帳簿に入力する業務)事務所によっては受けてもらえないこともある。・会計入力する手間を省いて本業に集中できる・プロに任せることで毎月いくらの利益がでているのかの経営状態を正確に把握できるようになる
節税の提案依頼できるが、あまり力を入れてくれない事務所もある。・税金の支払が少なくなることでキャッシュフローが良くなる
融資の相談事務所によっては受けてもらえないこともある。・融資の段取りや書類作成などの手間を省いて本業に集中できる・プロに頼むことで融資の成功確率が上がる
補助金・助成金の相談事務所によっては受けてもらえないこともある。(助成金の申請には社会保険労務士の資格が必要)・自分が使える補助金や助成金の制度がどれか教えてもらえるので、探す手間が省ける・プロに申請を任せられることで採択率がアップする
スタッフを雇ったときの労災保険や雇用保険の手続き依頼できない(依頼を受けるためには社会保険労務士の資格が必要)・手続きのことを調べたり、手続きに行く手間を省いて本業に集中できる。

ご覧いただいた通り、税理士に依頼することは、単なる業務の代行ではなく、「融資の成功」「節税による手残り資金の確保」「経営課題の発見」といった、飲食店経営の成功に関わる重要な業務です。しかし、もちろん依頼には費用が伴います。次の章では、依頼する際に避けられないデメリットについて解説します。メリットとデメリットを天秤にかけて、最適なパートナーを選びましょう。

税理士に依頼した場合のデメリット

料理人のあなたが苦手な事務作業を任せ、プロの目線から融資や経営のアドバイスを得られることは、税理士との契約の大きなメリットです。しかし、この章では、そのメリットを最大限に活かすために避けて通れない、費用と心理的な負担という2点のデメリットをまとめました。

デメリット
費用がかかる

やはり、この点が開業前の限られた資金における最大のデメリットになるでしょう。税理士へ支払う報酬は、融資成功時の手数料だけでなく、開業後の顧問料なども発生します。

かかる費用と、あなたが手に入れられる「安心感」と「時間」というメリットを天秤にかけて、依頼するかどうかを慎重に判断しましょう。

デメリット
専門家ゆえの経費の細かい指摘が入る

「税理士に依頼すると、この経費はダメとか細かく言われそう…」と、心理的な負担を感じてしまう方もいるかもしれません。

もちろん、税理士が指導するのは、あなたを困らせるためではありません。調理の現場出身のあなたが「これくらい大丈夫だろう」と見落としがちなルールの甘さが、将来的な税務調査で追徴課税(罰金のようなもの)が発生するリスクに直結するからです。税理士の細かい指導は、あなたの店を長期的に守るための「予防措置」だと理解してください。

税理士も、あなたの飲食店経営を支える重要なチームメンバーです。最初は「細かいな」「口うるさいな」と感じるかもしれませんが、これもあなたの店を長期的に守るための必要な指導だと理解し、真摯に対応していきましょう。

これらのメリット、デメリットを踏まえたうえで、次章からは「最高のチームメンバーとしての税理士」を見極めるための具体的な7つのチェックポイントについて解説していきます。

失敗しない税理士選びのチェックポイント1:融資に強いか

ポイント

開業初期の飲食店の経営パートナーとして、税理士に最も求められる知識は、税金よりも融資に関する知識です。

飲食店の顧問先を100件以上支援してきた私の感覚からすると、個人飲食店の一番の問題はいかに事業を存続させていくかという点であって、日々どうやって売上をあげるか、資金繰りが厳しい時にどうやって資金調達を成功させるかなどの課題を解決する方が、税金の正しい知識を身につけることよりも遥かに重要である、ということです。

税理士と契約する際には、税金の知識はもちろん備わっていると考えた上で、それ以上に「融資の知識」があるかどうかを、まずは一番に確認してください。

飲食店の創業融資支援実績を確認する

弁護士や医師のスキルが現場での経験によって培われるように、税理士における融資の支援も同様です。

いくら融資支援の実績が豊富でも、IT業や建設業と飲食業ではビジネスモデルが大きく異なります。

使用できる融資制度や、事業計画書の作成方法も変わってきますので、必ず飲食業の創業融資支援実績を具体的に確認するようにしてください。

開業後の追加融資を適切にサポートできるか

創業融資を受けた後、「工事費が思ったよりかかった」「予想外のトラブルが発生した」など、不測の事態により追加融資を受けなければならない状況に陥る可能性はゼロではありません。

融資に強い税理士を選んでいれば、こうした状況になった際でも、次の手が打てるよう適切なサポートをしてもらえます。

 例えば、私たちの事務所では、追加融資が発生する可能性を考えたうえで、創業融資の段階で以下のような戦略的な段取りを組んでいます。

point
創業融資額が1,000万円未満の場合

公庫で一本化し、保証協会付き融資の枠を追加融資枠として温存しておく

point
創業融資額が1,000万円を超える場合

協調融資で計画するが、創業後すぐの追加融資は難しくなるため、創業融資の段階で多めに借りるよう計画を考える

追加融資が発生しなければ、それはもちろん素晴らしいことです。しかし、経営はいつ何が起きるかわかりません。あらゆる可能性を考え、もしもの時の次の一手を考えてくれる税理士かどうか、しっかり確認してください。

返済が厳しくなったときのリスケをサポートできるか

万が一、資金繰りが悪化し、借入のリスケ(条件変更、すなわち返済スケジュールを変更すること)が必要になった場合でも、融資に強い税理士が力を発揮します。

飲食店をオープンして売上が伸びず、資金が減っていく状況は経営者にとって大きなストレスです。状況によっては、資金繰り悪化を乗り切るために、借入の返済を一時的にストップ(リスケ)することが可能です。

リスケは、金融情報に記録が残るため、最後の手段として我慢する方が多いです。しかし、ギリギリまで我慢した結果、金利の高い消費者金融などに頼ってしまうと、かえって状況が悪化します。

リスケには適切なタイミングや、適切なやり方があります。税理士契約の際には、もしもの時に備えてリスケの支援実績も確認できると、より安心です。

失敗しない税理士選びのチェックポイント2:事務作業を丸投げできるか

ポイント

記帳代行(会計帳簿への入力)の依頼できる税理士事務所を選びましょう。

可能であれば、労務手続きも一括で頼める社会保険労務士の資格を持つ税理士だと、安心感が格段に増します。

料理人兼オーナーとして開業すると、毎日が目が回る忙しさになります。朝から市場で仕入、ランチや仕込作業などで少し休憩できるのが15時ころ、その後ディナーが終わってから片付けまでして自宅に帰るのは深夜…。

こんな生活の中で、さらに苦手な事務作業に時間を奪われると思うと、ゾッとしませんか?
あなたの重な時間をメニュー開発や集客に集中させるためにも、税理士と契約する際は、事務作業をどこまで「丸投げ」できるかをしっかり確認しておきましょう。

日々の領収書入力(記帳代行)を依頼できるか

事務作業のうち、最も時間と労力がかかるのが、日々の領収書や売上データを会計ソフトに入力していく記帳代行です。この業務を依頼できるかは、必ず確認してください。

「税理士と契約したら当然できるはず」と思われるかもしれませんが、記帳代行は事務所側の体制が整っていないと受けてもらえません

日々の業務で忙しい料理人兼オーナーは、この記帳代行業務は税理士に依頼し、その時間をメニュー開発やお客様と向き合う創造的な仕事にあててもらう方が、お店の発展に必ずつながるでしょう。

雇用に関する手続きを一括で依頼できるか

スタッフを雇用した場合、税務署への書類提出だけでなく、労働基準監督署への労災・雇用保険の手続きなど、労務関係の書類提出も必要になります。

ここで注意が必要なのが、税務署への書類(給与支払事務所等の開設の届出など)は税理士が提出できますが、労務関係の書類(雇用保険や社会保険の手続き)は、社会保険労務士(社労士)の資格がないと代行できないという点です。

  • 短時間アルバイトの雇用でも、労務関係の手続きは発生します。
  • 週20時間以上のフリーターや正社員を雇用する場合は、雇用保険や社会保険の加入手続が必要になり、さらに複雑になります。

個人飲食店の場合、労務のためだけに社労士と別途契約すると費用が二重にかかるため、税理士と社労士の両方の資格を持っている専門家と契約することが、事務手続きのストレスを減らす最善策となります。この点もぜひ確認してください。

失敗しない税理士選びのチェックポイント3:飲食店経営に詳しいか

ポイント

飲食店の支援実績を確認することが最も重要です。顧問先が多い事務所は、成功事例・失敗事例という「生きたノウハウ」を持っているため、あなたの経営の参謀として最適です。

飲食店を開業した料理人兼オーナーの課題は多岐にわたります。最高の味を提供するだけでなく、売上アップ、人材採用と育成、融資・節税・補助金などを含めた資金繰り対策など、すべてをこなさなければなりません。

こうした多岐にわたる課題に答えられる、飲食店経営全般について詳しい税理士こそ、事業をスタートしたばかりのあなたにとっての理想のパートナーではないでしょうか?

飲食店の支援実績を確認する

まずは、その税理士の飲食店の支援実績を確認しましょう。支援している顧問先数が多いほど、色々な経営パターンを経験しているため、飲食店特有のノウハウを持っています。

成功している他のお店の原価率や人件費率の設定、人材募集の方法など、生きた情報を顧問先さまの成功事例として共有してくれる税理士こそ、あなたのパートナーにふさわしいと言えます。必ずホームページなどで飲食店の支援実績を確認してください。

売上・利益アップの提案ができるか

個人飲食店の立ち上げ時は、何よりも売上アップが最大の課題です。税理士の本業は税務ですが、飲食店の売上アップのための提案ができる税理士がパートナーになってくれると、これほど頼もしいことはありません。

例えば、私たちの事務所では、他のお店で効果が検証できた販売促進の手法(SNS活用、グルメサイトの広告、チラシ配布など)や、成功事例のノウハウを共有し、顧問先の支援を行っています。

ぜひ、飲食店の売上・利益アップに対しての具体的な提案方針なども確認してみてください。

適切な節税対策の提案ができるか

「税理士なんだから節税提案は当たり前」と感じるかもしれませんが、税理士によってはそれほど熱心に節税提案をしてくれない事務所もあります。

しかし、確認してほしいのは提案の量だけではありません。一点注意点があります。

それは、節税のために無理に利益を圧縮することで、逆にキャッシュフローが悪化したり、銀行から評価されない決算内容になった結果、新店舗出店の融資が難しくなるなどの問題に繋がる可能性があることです。

あなたの事業の現状や、将来の出店計画に合わせた「適切な節税提案」ができるかどうかを、確認しましょう。

労働環境の整備(労務)をまとめて依頼できるか

最近、個人飲食店でも退職した従業員からの未払残業代請求といった労働トラブルが増えています。こうしたリスクを回避し、従業員が安心して働ける労働環境を整備することは非常に重要です。

この労働環境の整備は、税理士ではなく社労士の業務になります。しかし、開業したばかりの飲食店では、コスト面から税理士と社労士の両方と個別に契約することは現実的ではありません

そのため、税理士と社労士の両方の資格を持った事務所と契約することが、トラブルを未然に防ぎ、事務手続きのストレスを減らす最善の策となります。

飲食店のITツール導入に詳しいか

料理人の方はアナログ思考な方が多い印象ですが、お店の生産性を高めるためには、クラウド会計やiPadで使うPOSレジ、勤怠管理ソフトなどのITツールを上手く利用することが不可欠です。

IT化は単に手間を減らすだけでなく、リアルタイムの経営状況把握にも直結します。これも税理士の本業ではありませんが、飲食店が使うITツールに詳しい税理士であれば、あなたの経営の生産性向上を図るための良きパートナとして非常に頼りになります。

失敗しない税理士選びのチェックポイント4:補助金や助成金に対応できるか

ポイント

 補助金・助成金は返済不要の貴重な資金です。申請は慣れが必要な業務なので、必ず契約前に申請実績をしっかり確認しましょう。

 補助金や助成金は、融資と違って返済の必要がない、お店にとって非常に貴重な資金です。開業後の小規模な飲食店としては、お店の価値アップや、新しい設備投資のために、ぜひこれらの制度を活用したいところです。

しかし、補助金・助成金の申請は非常に専門的で手間がかかるため、残念ながら全く対応してもらえない事務所も多いのが現状です。

融資と同じくらい重要な資金源を見逃さないためにも、契約前にしっかり対応可否を確認しておきましょう。

飲食店の補助金・助成金申請実績を確認する

補助金や助成金についても、税理士の取り組み実績を確認することが極めて重要です。

補助金・助成金の申請は、慣れていなければ膨大な時間がかかり、採択されることが難しい業務です。そのため、一般的な税理士事務所では「面倒だから」という理由で受けてくれないところが多いのです。

小規模飲食店が使いやすい「小規模事業者持続化補助金」などの具体的な補助金の活用実績があるかそして補助金・助成金の申請代行を日常的に行っているかを必ず確認してください。

実績が豊富な税理士であれば、あなたが使える制度を教えてくれるだけでなく、申請書類の作成から採択後の手続きまで、成功に向けてスムーズにサポートしてくれるはずです。

税理士選び

失敗しない税理士選びのチェックポイント5:面談の頻度と方法

ポイント

面談は多すぎても少なすぎてもダメ。あなたの貴重な時間を奪わず、経営に最適なタイミングで面談を提案してくれる事務所を選びましょう。

web面談可能な事務所であれば遠方でも依頼が可能なため税理士選びの選択肢が広がります。

飲食店を開業すると、朝から夜まで忙しい日々が続き、週に一度、二度の休みも仕入れや雑務で埋まりがちです。

この忙しい日々の中で、税理士との打ち合わせがあなたの負担にならないか、事前にしっかり確認しておく必要があります。面談の方法と頻度について、以下のポイントを確認してください。

面談の方法と面談の頻度を確認する

まずは、面談の方法です。お店に来てもらう訪問形式か、税理士事務所に行く来所形式かのどちらかになります。

おすすめ

  •  訪問形式

多くの場合、仕込みの合間に打ち合わせができるお店に来てもらうパターンがおすすめです。税理士事務所までわざわざ移動する時間や、貴重な休日を使う負担を避けられます。

次に、面談の頻度です。毎月面談がある事務所から、年に3回から4回程度の面談、もしくは面談は基本なしという事務所まで様々です。

おすすめ

  • 年に3回程度の面談頻度

毎月の面談は忙しい料理人兼オーナーには負担が大きすぎます。また、面談なしでは経営状況が手遅れになるリスクがあります。

年に3回程度、現在の損益状況を踏まえて今後の経営判断について話し合う時間を持つことが、最も効果的であると考えます。

遠方の場合はWeb面談が可能か確認する

「近くに飲食店に詳しい税理士がいない」「良さそうな税理士は遠方で会いにいけない」という地理的な制約はよくある問題です。しかし、コロナ禍以降は、Web会議形式での面談(オンライン面談)に対応できる税理士事務所が大幅に増えました。

Web面談のメリット

遠方の優秀な税理士であっても、Web会議形式で面談ができれば、地理的な不都合なくサポートしてもらえます。

アナログ思考の料理人の方からすると抵抗があるかもしれませんが、移動時間が一切かからないため、多忙な料理人のあなたにとって非常に便利な選択肢の一つです。

実際、当事務所でも遠方のお客様のサポートをWeb面談形式で数多く行っていますが、対面でお話するお客様と遜色なく、融資や経営に関するサポートができています。

思い切ってWeb面談に挑戦してみると、その便利さに驚かれると思います!

失敗しない税理士選びのチェックポイント6:料金はいくらか

ポイント

サービス内容と料金の費用対効果で契約を判断しますが、必ず一つの事務所だけでなく複数の事務所で見積りを取って比較検討しましょう。

開業後の飲食店経営者が、税理士との契約で一番ネックに感じるのが、やはり「料金」でしょう。「記帳くらい自分で頑張れば何とかなりそうだし、お金を出すのはもったいない気がする…」このように考えるのは無理もありません。

しかし、税理士は単に業務をこなす外注先ではなく、お店の成功を左右する重要なチームメンバーです。お店の成功のための「投資」と考えられるような税理士を見つけることができれば、料金への抵抗感はなくなるはずです。

とは言え、開業後は資金が限られているのも事実。理想と現実的な点を踏まえて、賢く考えていきましょう。

料金を確認する上での最重要チェックポイント

税理士事務所への料金を考える上では、以下の3点に特に注意してください。

point
年間トータルでいくらかかるか?

毎月の顧問料だけでなく、確定申告や年末調整など、別途発生する料金も含めて、年間で発生する総額を確認しましょう。

point
将来の料金アップの仕組みを把握しているか?

開業時は料金が安くても、従業員を雇用したり、2店舗目を出店したりすると、料金が大きくアップする場合があります。

今後長いお付き合いになるという前提で、将来的な料金体系のシミュレーションを依頼し、確認しておきましょう。

point
「料金表」が明確に作成されているか?

料金体系全体を把握するには、料金表を提示してもらうのが最もわかりやすい方法です。

残念ながら、世の中には料金表を作成していない、料金体系がブラックボックスになっている事務所も多くあります

明朗会計で料金表を作成している税理士であれば安心して契約できることでしょう。

料金は、必ずサービス内容と料金の費用対効果を天秤にかけて、複数の事務所と比較検討してから判断してください。

失敗しない税理士選びのチェックポイント7:信頼できそうか

ポイント

スキルや実績だけでなく、「人柄」と「相性」が最後の決め手です長く付き合う経営チームのメンバーとして、信頼できるかを見極めましょう。

これまでの6つのチェックポイントで、税理士の「融資の知識」「飲食業の実績」「料金体系」といった条件面は判断できたはずです。

しかし、最終的に契約するかどうかは、「この人に自分のお店を任せて相談できるか?」という、最もアナログで重要な判断にかかっています

税理士は、あなたの店の売上、経費、そして個人の資産状況まで知る重要なポジションです。単なる業務の委託先ではなく、開業後も経営の相談に乗るチームメンバーとなります。

信頼できるかどうかの見極め方

point
レスポンスの速さ

面談前のメールや電話対応が迅速で丁寧か。レスポンスが遅い税理士は、繁忙期や緊急時にあなたの店を後回しにする可能性があります。

point
現場への理解度

「料理人としてのこだわり」や「現場のオペレーション」について、耳を傾け、尊重してくれるか。理論だけでなく、現場の事情を理解しようとする姿勢があるかを見極めてください。

point
相性の良さ

偉そうにせず、専門用語を多用せず、あなたに分かりやすい言葉で話してくれるか。耳の痛い指摘も、信頼できる相手からなら素直に受け入れられます。

「話しやすい」「質問しやすい」と感じられるかどうかを最重要視しましょう。

最高の税理士とは、スキルと同時に「人」として信頼できる相手です。必ず一人の話で決めず、複数の税理士と面談して、あなたのお店に相応しいチームメンバーである税理士を選んでください。

開業時の税理士選び Q&A

税理士を選ぶ際、最も重要な「融資実績」は具体的に何を確認すればいいですか?

飲食店の「創業融資」の支援件数と成功率を確認してください。

 単に「融資支援100件」という総数だけでなく、そのうち「飲食店の創業融資」が何件あるかを確認するのが良いと思います。

さらに、もしもの時に備えて、「開業後に資金不足になった際、追加融資やリスケ(返済条件の変更)のサポート実績があるか」まで確認できると、その税理士の真の融資力が分かります。

税理士に支払う「成功報酬」は、融資額の何パーセントが相場ですか?

融資額の「3%〜5%程度」が一般的な相場です。

 ただし、金額が小さくなるほどパーセンテージが高くなる傾向があります。重要なのは、その報酬で「融資成功の確実性」「書類作成の手間からの解放」というメリットが得られるか、費用対効果で判断することです。

ただし、税理士事務所によっては金額に大きなバラツキがありますので、必ず複数の事務所から見積もりを取るようにしてください。

税理士が「認定支援機関」に登録されていると、私にとってどんなメリットがありますか?

金利優遇と公的な補助金申請の「入口」が開かれます。

 認定支援機関のサポートを受けることで、日本政策金融公庫の特定の融資制度(新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)で優遇金利(通常より低い利率)が適用されたり、補助金の申請要件を満たしやすくなるというメリットがあります。

これは、返済額や受け取れる資金に直結するため、非常に重要です。

記帳代行を依頼した場合、私は何をすれば良いですか?

領収書や請求書を「渡すだけ」でOKです。 

記帳代行を依頼した場合、あなたの作業は基本的に、日々発生した領収書、請求書、通帳のコピー(データ)などの資料を月に一度まとめて税理士に送るだけです。

これにより、最も時間のかかる会計ソフトへの入力作業から解放され、あなたは仕込みや接客に集中できます。

税理士は労務(アルバイトの保険手続き)も担当してもらえますか?

税理士が「社会保険労務士(社労士)」の資格を兼ねている事務所なら可能です。

 税理士の本来の業務は「税務会計」であり、労働保険や社会保険の手続きは社労士の独占業務です。

コストを抑え、事務作業を「ワンストップ」で依頼したい場合は、両方の資格を持つ税理士(または合同事務所)を選ぶように確認してください。

遠方の飲食業に詳しい税理士に依頼しても問題ありませんか?

はい、Web面談が可能なら全く問題ありません。

 最も重要なのは「飲食業のノウハウ」と「融資の実績」です。コロナ禍以降、Web会議ツールが普及したため、遠方であっても、あなたの負担になる移動時間なしで、対面と遜色ないサポートを受けられます。

地理的な制約にこだわらず、優秀なパートナーを選ぶことが賢明です。

最後に

長年の経験と技術を持つあなたにとって、税理士選びは、最高の料理と安定した経営を両立させるための経営チームのスターティングメンバー選びです。

良い税理士とは、単なる経理の代行ではありません。それは、経営状況を数字で見える化し、融資を成功させ、手元に残る資金の最大化を実現する、あなたの店の強力な「参謀」あり「チームメンバー」なのです。

「最高のチーム」を組めば、あなたは最も得意な料理に全力を注ぐことができ、成功への道は大きく開けます。

最終的に大切なのは、スキルと同じくらい「人」として信頼できる相手かどうか。必ず一人の話で決めず、複数の候補者と面談してください。

「開業後の長い付き合いになる、運命のチームメンバー」を選ぶつもりで、最適なパートナーを見極めましょう。

自信を持って、最初の一歩を踏み出してください!

この記事を書いた人

溝川 裕也のアバター 溝川 裕也 公認会計士・税理士・社会保険労務士・ワインエキスパート

飲食業専門の会計事務所を経営しています。

これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、創業融資支援は100件以上、補助金採択は10件以上。「料理人の可能性を引き出す」をミッションに、料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。

現在は大阪調理製菓専門学校やレコールバンタンにて、学生向けに「飲食店経営」や「お金の基礎」に関する授業も担当しています。

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