
大阪食堂サポート会計事務所代表 溝川裕也
公認会計士、税理士、社会保険労務士、ワインエキスパート
これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、融資支援100件以上。料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。
飲食店の開業において、自己資金の額は、単に初期投資の一部となるだけでなく、創業融資の限度額と、ひいては実現できる店舗の形態を決定づける重要な要素です。
「どれくらいの自己資金があれば、いくら借りられて、どんな店が開けるのか?」
この疑問にプロの視点からお答えするため、本記事では、自己資金の金額(50万円〜300万円以上)別に、融資の目安額と、資金規模に応じた具体的な出店戦略を解説します。
開業を目指すあなたが、自分の資金力でどこまで理想を追求できるのか、その現実的なロードマップをご確認ください!
【結論】自己資金の金額別の創業融資限度額と具体的な出店プランの一覧表

まず初めに結論として、自己資金額に対する融資限度額の目安と出店プランをまとめました。こちらの一覧表を前提に、以下の章から詳細な解説を進めていきます。
| 自己資金 | 融資限度額の目安 | 出店プラン |
|---|---|---|
| 50万円 | 200万円〜300万円 | 徹底的なコスト削減を目指す開業 詳しい解説はこちら |
| 100万円 | 300万円〜500万円 | コスト削減を目指しながら、要所での必要な投資で差別化を目指す開業 詳しい解説はこちら |
| 200万円 | 300万円〜1,000万円 | 現実的な面も考慮した理想の店づくりを目指す開業 詳しい解説はこちら |
| 300万円以上 | 300万円〜2,000万円 | ハイレベルな理想の店づくりを追求する開業 詳しい解説はこちら |
創業融資で自己資金が重要視される理由
開業を志し、融資の勉強を始めると、「自己資金が重要だ」という情報にたどり着くはずです。
しかし、多くの方が「とにかく貯めればいいんだな」と思うだけで、「なぜ、そこまで自己資金が重要なのか」という核心までは理解できていません。
この章では、融資審査を乗り越えるうえで、自己資金が具体的にどのような役割を果たすのか。その理由をプロの視点から解説します。
理由① お金の計画性や事業への本気度があるかの確認のため
融資審査で金融機関が見ているのは、「自己資金の金額」だけではなく、「そのお金を貯めるまでに至ったプロセス」です。
自己資金を貯めるプロセスを確認することで、具体的には以下の2点が評価されています。
飲食の現場仕事で忙しい中、毎月決まった額を長期間にわたってコツコツと貯蓄してきた通帳の履歴は、そのまま「この人は目標達成に向けて計画的に資金を管理できる」という経営者として計画性があるという評価に繋がります。
飲食店で勤務しながら何百万円も貯金をするということは、並大抵の努力では難しいはずです。給料の中から毎月コツコツしっかり貯金をするということが、独立への熱意と本気度の直接的な評価に繋がります。
理由② 融資限度額を決める基準となるため
自己資金は、あなたが「どこまで借りられるか」という融資限度額を決める際の明確な土台となります。
融資審査では、借入依存度(総投資額に占める借入の割合)が厳しくチェックされます。この依存度が高すぎると、「事業のリスクが高い」と判断され、融資を控えられたり、希望額が減額されたりする原因となります。
金融機関は、借入依存度が高くなりすぎないように、借入の限度額を決めます。
つまり、自己資金が多いほど、金融機関も安心して融資の金額を増やせるわけです。
自己資金として認められるもの
自己資金は、ただお金が手元にあれば良いわけではありません。融資審査では、そのお金が「どのように貯められたか」という履歴が重要になります。融資審査で「自己資金」として認められるためのポイントを解説します。
自分名義の預金通帳のお金
最も信頼される自己資金です。 融資の審査では、通帳に記録された「長期間(最低でも6ヶ月以上)にわたる計画的な貯蓄履歴」が重視されます。
これは、申込者の計画性や事業に対する本気度を示す重要な根拠となるからです。
- 融資申込直前に、多額の現金が一括で入金されている場合は、「見せ金」と見なされ、自己資金として認められない可能性が高くなります。詳細は、「見せ金などの他からの借入」の章をご参照ください。
- あなたの信用力を証明するため、最低でも過去6ヶ月〜1年分の通帳履歴を明確に説明できるようにしておきましょう。
配偶者の預金通帳のお金
自己資金は原則として申込者本人名義ですが、配偶者名義の預貯金も、自己資金として認められるケースがあります。 これは、夫婦の財産は実質的に同一と見なす考え方に基づくものです。
- 面談時に「この資金は事業のために夫婦で協力して貯めたものであり、事業への使用について夫婦で同意している」旨を明確に説明することが必要です。
- 審査をスムーズにするため、資金移動の履歴など、資金の出所や経緯を明確にしておくことが重要です。
- 日本政策金融公庫の融資では認められることが多いですが、信用保証協会付きの融資では、銀行や信用保証協会の方針により「本人名義の通帳のみ」と判断される事例もあります。現に当事務所の支援先でも指摘されたことがあります。
- 保証協会付き融資を検討されている場合は、事前に利用予定の銀行や信用保証協会に確認することをおすすめします。
親族からの支援金
親や兄弟姉妹など親族から開業資金の支援(贈与)を受けた場合、「返済義務のない贈与である」ことが明確に説明できれば、自己資金として認められる可能性があります。
返済義務がある「借入金」は、自己資金として認められません。 支援金が純粋な贈与であることを、融資面談で説明しましょう。
資金の出所を明確にするため、支援元である親族名義の預金通帳の提示を求められる場合があります。
支援金のみが自己資金の場合、審査で不利になる可能性が高いです。例えば、「自分で貯めた自己資金がゼロで、親族からの支援金のみ」というケースは、事業への本気度や計画性が不十分と見なされ、自己資金として認められない可能性が高いです。
実務的な進め方
実際の融資支援の経験から見ると、親族からの支援金を自己資金として認定してもらいやすいのは、以下のようなケースです。
「自分で貯めた資金がベースとしてあり、借入依存度を下げるために、その追加資金として親族の支援金も活用する」
つまり、ご自身の貯蓄努力が前提としてあり、親族の支援金はそれを補強する形で活用するのが、審査通過への近道となります。
安易に支援金だけで自己資金要件を満たそうとせず、まずはご自身の貯蓄実績を重視して準備を進めることが重要です。
親族からの贈与の場合は、年間で110万円を超えた金額は贈与税の対象になりますので、ご注意ください。
事業のために前払いしたお金
開業準備を進める中で、既に支払ったお金も、自己資金の一部として認められます。
例えば、以下のような費用が該当します。
- 既に支払った店舗の敷金・保証金
- 既に支払った内装業者への着手金
- 既に購入し支払いが完了した厨房機器
これらの費用が自己資金として認められるためのポイントは、「預金通帳から行われた履歴」を証拠として提出できることです。
また、同時に領収書の提出も求められますので、支払履歴が確認できる通帳と、領収書(もしくは契約書や請求書)は必ず準備しておきましょう。
融資の決定前に物件契約をしている場合は、「安易に融資が決まるという前提で開業準備を進めていませんか?」という開業の計画性を疑われるような質問を融資面談で受ける可能性があります。
可能であれば不動産業者に相談して、融資の決定が決まるまでは手付金の支払いで物件を抑えてもらうことを交渉しましょう。
既に契約してしまっている場合は、融資が決まらないというリスクを負いながらも契約せざるを得なかった理由を面談で説明できるように準備しておきましょう。
自己資金として認められないもの
せっかく事業のためにコツコツ貯金しているとしても、融資審査で自己資金として認めてもらえなければ意味がありません。
以下のものは、原則として自己資金と認められないか、認めてもらうためには現金化するなどの手続きが必要となります。
解約返戻金がある生命保険やNISAなどの金融資産
自己資金=事業に使用できるお金、という点から考えると、生命保険の解約返戻金や、NISA・特定口座などで保有している株式、投資信託などの金融資産は、そのままでは自己資金として認められません。
これらの資産を自己資金として含めるには、融資申し込みまでに解約・売却し、そのお金を本人名義の預金口座に入金して、通帳に入金履歴を残す必要があります。
売却・解約により元本割れや税金が発生する可能性があるため、十分な検討が必要です。
iDeCoなどの私的年金
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業年金などの私的年金は、原則として60歳まで引き出すことができない仕組みになっています。
このため、創業資金として自由に引き出して事業に充てることができないため、自己資金とは見なされません。
タンス預金
自宅の金庫や、貯金箱などに保管して手元にある現金(通称、タンス預金と呼びます)は、自己資金として認められません。
なぜなら、通帳などの公的な記録がないため、そのお金が「いつから」「どのように」貯められたのか(貯蓄の経緯)や、「どこから」来たのか(資金の出所)を客観的に証明できないからです。
タンス預金を自己資金に認めてもらうための対策
残念なご案内になりますが、自己資金がタンス預金しかない場合は、融資の申し込み時期を遅らせることを検討してください。
融資の申し込み時期を遅らせることで、タンス預金を自己資金として認めてもらえるような対策を講じることが可能です。
資金の存在を通帳の記録に残すため、まずは手元のタンス預金の全額を本人名義の通帳に入れましょう。
入金後から通帳の預金に出入りがあっても問題はないのですが、入金したタンス預金が見せ金ではないことを証明する必要があるため、半年程度はタンス預金の入金額が減らないように残高をキープできるようにしましょう。
入金後は可能であればさらに自己資金を積み上げていきましょう。その際に、給料など自己資金を貯める元になるお金は全て通帳に一度入金するようにして、生活費などはそこから引き出す形で使用すれば、資金の透明性が高まって信用度が増します。
見せ金など他からの借入金
融資審査を通過するために、友人や知人などから一時的に借り入れて口座に入金したお金のような、自己資金と見せかけた出所不明の資金については「見せ金」と判断されます。
「見せ金」は、単に自己資金として認められないという問題に留まりません。
融資審査では、通帳の入金履歴を厳しくチェックし、不自然な大口入金があれば資金の出所を必ず質問します。この際に「見せ金」であると判明した場合、自己資金について虚偽の申告をしたと見なされ、融資審査の否決に繋がります。
虚偽の申告は、申請者の信用を決定的に失墜させます。その時点で融資審査の通過は極めて困難となり、将来的な融資の可能性も閉ざされてしまう可能性があります
くれぐれも「見せ金」による不正な申告は絶対に行わないでください!

【自己資金50万円】融資限度額の目安と出店プラン〜徹底的なコスト削減型開業
自己資金の定義を確認したところで、ここからは、自己資金の金額別に具体的にどのような出店プランを取ることができるかを解説していきます。
自己資金50万円は飲食店開業にとって決して十分な金額ではありませんが、戦略的に計画を立てることで実現は可能です。
自己資金50万円の場合の融資限度額の目安と出店プラン
自己資金50万円で開業を目指すためには、初期費用の徹底的な削減が必要です。ほぼ全ての設備が揃っている居抜き物件を選び、かつ初期費用の負担が小さい立地(2等立地・3等立地)を組み合わせることが成功の絶対条件となります。
- 飲食店の居抜き物件とは?
-
前の借主が使用していた内装、設備、厨房機器、家具などを引き継いで使用できる物件です。通常の不動産契約で発生する敷金などとは別に、造作譲渡代金の支払いが必要となることが一般的ですが、一から工事をしたり、設備を揃えるよりも大幅に開業時の初期投資を節約することが可能です。
| 項目 | 目安・戦略 | 詳細 |
|---|---|---|
| 融資限度額目安 | 200万円〜300万円 | ・飲食業の業務経験が十分にあることが前提で200万円から300万円程度が目安。 ・飲食業での業務経験が乏しい場合は、自己資金50万円だと融資を受けること自体は難しいでしょう。 |
| 出店戦略 | 徹底したコスト削減型 | 居抜き物件の活用を前提とし、設備投資を最小限に抑えます。 |
| 立地の選択 | 2等立地、3等立地 | 不動産の初期費用(敷金・保証金など)の支払額が抑えられる主要な通りから外れた立地の物件が候補です。 |
創業融資の実例:自己資金50万円で300万円の融資を実現
当事務所が支援し、開業に至った具体的な事例をご紹介します。
実例紹介
50万円の自己資金で300万円の融資に成功し、レジャービル内でカウンター10席の小規模な居酒屋を開業しました。
この開業は、物件取得費が約50万円と非常に安価で済んだこと、また、完全な居抜き物件であったため、設備の造作譲渡、一部の追加工事、追加の設備購入費用等を合計200万円以内に抑えられたことで実現しました。
この事例からも、物件の初期費用と設備投資の徹底的なコスト削減が、自己資金が少なくても融資獲得と開業を可能にする突破口であることがわかります。
【自己資金50万円の開業】成功のポイント
自己資金50万円で事業を成功させるために、特に注力すべき3つのポイントは以下です。
融資限度額が小さいため、小規模(カウンター数席など)かつ居抜き物件で、初期投資を抑えた形態に限定せざるを得ません。
立地や内装といった「箱もの」での差別化が難しいため、メニューの独創性、接客の質、コンセプトの面白さなど、お金をかけない「ソフト面」でお客様を惹きつける努力が不可欠です。
初期投資を極限まで抑えたとしても、融資額が少ないため、開業後の運転資金が不足しがちです。万一、売上目標に達しなかった場合に備え、全額を設備に使うのではなく、運転資金として予備資金も残すように努力しましょう。
【自己資金100万円】融資限度額の目安と出店プラン〜コスト削減型開業でもオリジナリティを追求
自己資金が100万円あれば、50万円の場合と比較してお店の形態の選択肢が広がり、戦略的にオリジナリティを出すことが可能になります。目指す業態によっては十分ではないかもしれませんが、計画的な投資で実現を目指しましょう。
自己資金100万円の場合の融資限度額の目安と出店プラン
自己資金100万円での開業は、居抜き物件を基本としつつ、資金に余裕を持たせて部分的な改装で個性を出す戦略が有効です。高額な投資が必要な1等立地への出店は難しいため、初期費用が低い立地での出店を前提とします。
| 項目 | 目安・戦略 | 詳細 |
|---|---|---|
| 融資限度額目安 | 300万円〜500万円 | ・飲食業の業務経験が十分にあることが前提で、300万円から500万円程度が目安。 ・飲食業での業務経験が乏しい場合は、自己資金100万円だと融資を受けること自体は難しいでしょう。 |
| 出店戦略 | コスト削減型+要所での投資 | 居抜き物件の活用で設備コストを抑えつつ、内外装の部分改装、テーブル・椅子の変更、食器やカトラリーの品揃えなど、「要所」に資金を投じることでオリジナリティをアピールします。 |
| 立地の選択 | 2等立地、3等立地 | 不動産の初期費用が抑えられる立地が基本です。初期費用が若干高い物件に挑戦する場合でも、その分設備・内装費を徹底的に抑えるなど、総投資額のバランス調整が重要になります。 |
創業融資の実例:自己資金100万円で500万円の融資を実現
当事務所が支援し、開業に至った具体的な事例をご紹介します。
実例紹介
100万円の自己資金で500万円の融資に成功し、駅近の小規模(7坪程度)の居酒屋を開業しました。
この開業は、物件取得費が約70万円と安価で済んだこと、他のサービス業の居抜きであったため、工事が必要であったものの、物件そのものが綺麗で、店舗の面積も狭かったことから、工事代金、設備購入費用等を合計300万円以内に抑えられたことで実現しました。
自己資金100万円は飲食業開業に十分な金額ではないかも知れませんが、物件の初期費用と設備投資を抑えることで、融資獲得と開業が十分可能であることがわかります。
【自己資金100万円の開業】成功するポイント
自己資金100万円で事業を成功させるために、特に注力すべき3つのポイントは以下です。
融資限度額を考慮し、小規模な居抜き物件をベースとします。大きな店舗やスケルトン(内装のない状態)からの新装は、資金的に困難です。
メニューや接客の質などの「ソフト面」でお客様を惹きつける努力が不可欠なのは大前提です。その上で、内外装の部分改装や、使用する食器など、「ピンポイントなハード面」に資金を投じることで、低予算ながらも印象的な差別化を図りましょう。
総投資額が小さいため、客席数が限られた小規模物件が中心になります。席数の少なさを補うため、客席回転数の向上や客単価アップを狙えるメニュー構成・サービス設計など、売上確保のためのオペレーションの組み立てが重要になります。
【自己資金200万円】融資限度額の目安と出店プラン〜現実的な面も考慮した理想の店舗の実現
自己資金が200万円になると、選択肢は大きく広がり、内装や設備(ハード面)と、メニュー・接客(ソフト面)の両輪でオリジナリティを追求できる店舗作りを目指せるようになります。
自己資金200万円の場合の融資限度額の目安と出店プラン
自己資金200万円は、居抜き物件の活用に加えて、スケルトン(内装のない状態)からの工事も視野に入れられる資金水準です。重要なのは、総投資額における立地と設備投資のバランスです。
| 項目 | 目安・戦略 | 詳細 |
|---|---|---|
| 融資限度額目安 | 300万円〜1,000万円 | ・飲食業の業務経験が十分にあることが前提で、500万円から1,000万円程度が目安。 ・飲食業での業務経験が乏しい場合でも、自己資金200万円だと、200万円から300万円程度の融資を受けられる可能性はあります。 |
| 出店戦略 | 設備重視の立地コスト削減型 or 立地重視の設備コスト削減型 | 内装や調理設備にこだわりたい場合は、不動産初期費用が極力低い物件を選びましょう。また、立地を重視して不動産初期費用が高くなる場合は、居抜き物件などで設備コストを極力削減できるような出店を目指しましょう。 |
| 立地の選択 | 1.5等立地から3等立地まで | 1等立地は難しいものの、人通りと賃料のバランスを考慮したエリア選定が可能です。不動産初期費用と内装・設備の合計額のバランスを徹底的に練りましょう。 |
創業融資の実例:自己資金200万円で1,000万円の融資を実現
当事務所が支援し、開業に至った具体的な事例をご紹介します。
実例紹介
200万円の自己資金で1,000万円の融資に成功し、13坪程度の和食料理店を開業しました。
駅から徒歩10分程度の郊外物件であったため、物件取得費が約60万円と安価でした。これにより、居抜き造作の一部を活用しつつ、内装工事と厨房設備に900万円、食器類に100万円という大規模な投資を行うことができ、自分の理想に近い店舗を作り上げることができました。
自己資金200万円であれば、物件の条件(立地コスト)と設備投資のバランスを取ることで、理想に近い内装・設備を実現できる可能性がグッと高まります。
【自己資金200万円の開業】成功するポイント
自己資金200万円で事業を成功させるために、特に注力すべき3つのポイントは以下です
融資限度額で1,000万円も視野に入るため選択肢は広がりますが、全てに資金を投じることはできません。「何に一番お金をかけ、どこを節約するか」という戦略的な判断が重要です。設備にこだわるなら物件費用を抑えるなど、投資の優先順位付けを明確にしましょう。
ある程度の設備投資が可能となるため、内装や設備などの「ハード面」と、メニューや接客などの「ソフト面」の両方から、他店との決定的な差別化を図りましょう。両者が相乗効果を生むことで、店舗の価値を最大化できます。
借入額が大きくなるほど、万が一事業が失敗した場合のリスクも大きくなります。開業時から確実に売上を上げられるよう、市場分析、コンセプト、ターゲット設定を綿密に行い、実現可能性の高い事業計画を堅固に固めることが、成功への条件となります。
【自己資金300万円以上】融資限度額の目安と出店プラン〜理想を追求するハイレベルな開業戦略
自己資金が300万円以上ある場合、多額の設備投資が必要となるファインダイニング(高級レストラン)の開業も現実的な選択肢となります。初めての開業で自分の理想とする店舗を100%表現したいなら、この水準の資金準備を目指すべきでしょう。
自己資金300万円以上の場合の融資限度額の目安と出店プラン
自己資金300万円以上あれば、出店戦略の選択肢は大きく広がり、理想を追求する段階へと移行します。
| 項目 | 目安・戦略 | 詳細 |
|---|---|---|
| 融資限度額目安 | 300万円〜2,000万円 | ・飲食業の業務経験が十分にあることが前提で、700万円から最大で2,000万円の融資も視野に入ります。 ・飲食業での業務経験が乏しい場合でも、自己資金300万円だと、300万円から500万円程度の融資を受けられる可能性はあります。 |
| 出店戦略 | 理想追求型 | 自己資金と借入を合わせた総額で2,000万円以上の資金が見込めるため、内装や設備において妥協せず、コンセプトに合わせた理想の店づくりが可能となります。 |
| 立地の選択 | 1等立地から3等立地まで | 人通りの多い1等立地での出店の場合は、店舗の面積が狭いなど制約が多くなると思いますが、出店の選択肢も取れる資金規模です。 |
創業融資の実例:自己資金400万円で2,000万円の融資を実現
当事務所が支援し、開業に至った具体的な事例をご紹介します。
実例紹介
400万円の自己資金をベースに、2,000万円の融資に成功し、ディナー客単価13,000円以上のイタリア料理店を開業しました。
この開業では、内外装工事に1,200万円、厨房機器に800万円、家具や食器に100万円を投じました。潤沢な資金により、細部にまでこだわった内装と最新の調理設備を導入し、理想を実現した飲食店を開業することができました。
自己資金が300万円以上あれば、高級レストランの出店を含め、資金的な制約から解放された理想の店舗設計が可能となります。
【自己資金300万円以上の開業】成功するポイント
自己資金300万円以上の開業で事業を成功させるために、特に注力すべき3つのポイントは以下です。
借入額が最大2,000万円と高額になるため、事業失敗時のリスクも最大になります。通常の計画に加え、売上が想定より伸びなかった場合など複数のシナリオに対する対策や資金繰りを練り込み、万全を期した開業を目指しましょう。
内装工事費はこだわるほど青天井になります。個人の趣味や好みに偏ることなく、「集客への貢献度」「他店との差別化効果」「オペレーション効率」といった費用対効果の観点から投資の妥当性を厳しく判断し、しっかり稼げる店を作るための設備投資を目指してください。
豪華な内装や設備(ハード面)は集客のきっかけにはなりますが、リピーターを作るのはメニューや接客、サービスの質(ソフト面)です。「立派な店だから客が来る」と安易に考えず、ハード面に見合う、あるいはそれを凌駕する最高レベルのソフトのオリジナリティを徹底的に磨き込みましょう。
自己資金に関するQ&A
- 自己資金として認められる預金は、いつから貯めていた履歴が必要ですか?
-
最低でも過去6ヶ月分、できれば1年分の通帳履歴を提出できるように準備してください。
特に、毎月給与からコツコツと貯蓄している履歴(プロセス)が、経営者の計画性と本気度を示す重要な証拠となります。
- 自己資金を貯めている通帳以外に生活費の通帳がありますが、こちらも提出すべきですか?
-
提出してください。
生活用口座からは、家賃や公共料金、クレジットカードなどの支払い状況(引き落とし履歴)が確認されます。これらの支払いに半年から1年間、遅延がないことは、経営者の信用力を証明する上で重要なチェック項目となります。
- 自己資金以外に、事業には使用しない予定の預金が300万円あります。この預金があると、借入額を減額される可能性はありますか?
-
ありません。
事業に使用しない個人の余裕資金があること自体は、審査でマイナスになることはまずありません。金融機関から「その預金を使えば借入を減らせるのではないか」といった指摘を受ける心配も基本的にありませんので、ご安心ください。
- 生命保険や株式などは売却しないと自己資金にならないなら、融資面談で書類を提出しなくても良いですか?
-
提出しましょう。
自己資金として計算はされなくても、事業資金とは別の「個人の余裕資金がある」という事実は、審査においてプラスの加点材料となります。個人の資産状況の安定性を示すため、自己資金に入らない資産であっても積極的に面談で提示すべきです。
- 退職金が入金される見込みですが、自己資金になりますか
-
はい、自己資金として認められます。
資金の出所を明確にするため、勤務先から発行される退職所得の源泉徴収票(または見込み額の証明書)を提出し、退職金の入金であることを証明しましょう。
- 消費者金融への借入残高が50万円あります。自己資金の評価に影響を与えますか?
-
影響があります。
消費者金融からの借入は、借入の目的や時期によっては、自己資金からその借入額を差し引いた額が、融資審査上の自己資金額と認定される可能性が高いです。また、借入行為そのものが計画性や信用力の評価にマイナスに作用するリスクがあります。
- 自動車ローンや住宅ローンの残高がある場合は、自己資金の評価に影響を与えますか?
-
原則として影響はありません。
自動車ローンや住宅ローンのように、生活用の借入であってもその借入に対応する資産(車両や住宅)がある場合は、自己資金の評価額を直接的に減額する要因とはなりません。
- 友人と2人で開業します。事業主は私の名義で開業する予定ですが、友人の預金も自己資金として認められますか?
-
認められません。
自己資金の評価の対象となるのは、あくまで事業主として開業するご本人(申込者)の資金です。共同経営者や友人からの資金は、原則として借入金として扱われます。
- 自己資金が複数の口座に散らばっているのですが、融資前に一つの口座にまとめた方が融資審査上はプラスになりますか?
-
そのままの状態でも問題ありません。
融資審査では、通帳が複数あっても、それぞれの通帳ごとに資金の出所と貯蓄の経緯が明確に確認できれば、自己資金の評価に悪影響を与えることはありません。わざわざ審査直前に口座をまとめる必要はありません。
最後に
本記事では、創業融資における自己資金の重要性から、認められる資金と認められない資金の明確な線引き、そして自己資金の金額に応じた現実的な出店戦略までを詳細に解説しました。
自己資金の評価や事業計画の作成には、専門的なノウハウが不可欠です。ご自身の自己資金が適切に評価されるか不安な方、融資額を最大限に引き出したい方は、ぜひ一度、創業融資の専門家にご相談ください。
あなたの開業が成功することを心より願っています!

