
大阪食堂サポート会計事務所代表 溝川裕也
公認会計士、税理士、社会保険労務士、ワインエキスパート
これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、融資支援100件以上。料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。
「公庫から融資を受けたら、毎月いくら返済しないといけないんだろう?」
飲食店の開業を目指す料理人の方から、このような質問をよくいただきます。内装費や厨房機器の見積もりは目に見えるのでイメージしやすいのですが、融資を受けた後の「毎月の返済額」は具体的な数字が分からず、不安を感じている方が多いようです。
毎月の返済額は「金利」「返済期間」「据置期間」という3つの要素の組み合わせで決まります。中でも、返済期間と据置期間の設定は、開業後の資金繰りを大きく左右する重要な判断ポイントです。
ここに一つ大きな落とし穴があります。日本政策金融公庫の公式ホームページには「返済期間20年以内」「据置期間5年以内」等の記載がありますが、飲食店の創業融資でこれらの上限が認められることはほとんどありません。
実務上は、設備資金で7年〜10年の返済、運転資金で5年〜7年の返済、据置期間は6ヶ月〜1年程度が現実的な目安です。
この記事では、100件を超える飲食店の融資支援実績をもとに、借入額別の具体的な月々返済額から、返済期間・据置期間の現実的な設定方法、開業後の資金繰りを安定させる戦略まで、実務的に解説します。
ぜひ最後までお読みください。
【結論】一般的な飲食店の借入額と毎月の返済額の目安
「公庫から融資を受けたら、毎月いくら返済しないといけないのか?」
これは飲食店開業を目指す料理人の方が最も気になる点ではないでしょうか。まずは、飲食店の創業融資において最も一般的といえる条件で、借入額に応じた毎月の返済イメージをまとめました。
飲食店は開業初年度が最も資金繰りが厳しい時期です。ここでは開業初年度の月額返済額のイメージをつかんでいただくため、据置期間終了後の返済額を示しています。
- 金利: 2.0%で想定
- 返済期間: 設備資金・運転資金の平均で9年を想定
- 据置期間: 6ヶ月を想定
| 借入額 | 開業初年度の月々返済額(据置期間終了後) |
|---|---|
| 300万円 | 約3.4万円/月(利息0.5万円、元本2.9万円) |
| 400万円 | 約4.6万円/月(利息0.7万円、元本3.9万円) |
| 500万円 | 約5.7万円/月(利息0.8万円、元本4.9万円) |
| 600万円 | 約6.9万円/月(利息1.0万円、元本5.9万円) |
| 700万円 | 約8.1万円/月(利息1.2万円、元本6.9万円) |
| 800万円 | 約9.2万円/月(利息1.3万円、元本7.9万円) |
| 900万円 | 約10.3万円/月(利息1.5万円、元本8.8万円) |
| 1,000万円 | 約11.5万円/月(利息1.7万円、元本9.8万円) |
| 1,100万円 | 約12.6万円/月(利息1.8万円、元本10.8万円) |
| 1,200万円 | 約13.8万円/月(利息2.0万円、元本11.8万円) |
| 1,300万円 | 約14.9万円/月(利息2.2万円、元本12.7万円) |
| 1,400万円 | 約16.1万円/月(利息2.3万円、元本13.8万円) |
| 1,500万円 | 約17.2万円/月(利息2.5万円、元本14.7万円) |
| 1,600万円 | 約18.4万円/月(利息2.7万円、元本15.7万円) |
| 1,700万円 | 約19.5万円/月(利息2.8万円、元本16.7万円) |
| 1,800万円 | 約20.7万円/月(利息3.0万円、元本17.7万円) |
| 1,900万円 | 約21.8万円/月(利息3.2万円、元本18.6万円) |
| 2,000万円 | 約23.0万円/月(利息3.3万円、元本19.7万円) |
- 上記の支払いは据置期間終了後の支払いのイメージです。据置期間中は利息のみの支払いとなります。
それでは、以下からは、毎月の返済額を左右する重要な要素である返済期間と据置期間の詳細について解説していきます。
毎月の返済額を決める重要な要素は金利、返済期間、据置期間の3つ
融資返済にかかる毎月の支払額を決定する重要な要素は、金利、返済期間、据置期間という3つの要素です。これらの組み合わせ方によって、店舗経営の資金繰りは大きく変わります。
- 金利(利率)とは?
-
借りたお金に対して支払う利息の割合です。
以前の記事で解説した通り、公庫の創業融資ではさまざまな優遇制度を活用することで、この金利を低く抑えることができます。 金利が下がれば、その分だけ毎月の利息負担が軽くなり、完済までに支払う総額も少なくなります。
金利に関する記事はこちらを参照ください。
大阪食堂サポート会計事務所
【2026年1月最新】飲食店の公庫創業融資の金利を徹底解説 | 大阪食堂サポート会計事務所 飲食店をオープンさせる際、避けて通れないのが資金調達です。その中心となる日本政策金融公庫での融資を検討する際、多くの開業者が気にするのが「金利の負担」ではないで… - 返済期間とは?
-
返済期間は、融資を受けてから完済するまでの期間です。
毎月の返済額を最も大きく左右するのがこの期間です。借入額が同じでも、返済期間を5年から10年に延ばせば、単純計算で毎月の元本返済額は半分になります。このように、返済期間が長ければ長いほど、毎月の返済額は少なくなります。
- 据置(すえおき)期間とは?
-
据置期間は、元本の返済を待ってもらい、利息のみを支払えばよい猶予期間のことです。
開業したばかりの時期は、売上が安定しなかったり、予想外の出費が重なったりと、最も現金が減りやすいタイミングです。この期間を適切に設定することで、経営が軌道に乗るまでの数ヶ月間、キャッシュの流出を最小限に食い止めることができます。
毎月の返済額を抑えて手元に現金を残すためには、これら3つの要素をバランスよく、かつ戦略的に設定することが重要です。ここからは、特に飲食店オーナーが迷いやすい返済期間と据置期間の具体的な目安について深掘りしていきましょう。
返済期間

融資を受けたお金を何年かけて返すかという返済期間の設定は、お店の現金を枯渇させないための重要な戦略です。ここで注意したいのが、公庫のホームページに書かれている最長期間と、実際の審査で認められる期間には大きなギャップがあるという点です。
公庫ホームページの返済期間と実際に設定できる期間には大きなギャップがある
公庫の公式サイトを見ると、新規開業資金などの返済期間は「設備資金 20年以内」「運転資金10年以内」といった期間が記載されています。
しかし、これを鵜呑みにして「設備資金を20年返済で」と申し込んでも、飲食店の創業融資の審査で認められることはまずありません。実務上は、以下のような期間が実質的な上限の目安となります。
飲食店開業時の設備資金の返済期間の目安は7年から10年
ポイント
- 制度上の上限: 20年以内
- 飲食店の一般的な目安: 7年〜10年
- 対象: 内外装工事費、1つあたり10万円以上の厨房機器や什器類、物件の保証金など
内装工事費や厨房機器などの設備資金は、その設備が機能する期間(耐用年数)に合わせて返済していくという考え方が基本です。そのため、多くの飲食店では7年から10年の間で設定されます。
当事務所がこれまでご支援してきた経験上、多くの場合で10年の返済期間が認められていますが、中には希望を10年で出したにもかかわらず、結果的に7年や8年で決定されるケースもあります。
審査基準の詳細は公表されていませんが、借入額、毎月の利益から計算される返済能力、創業者の信用情報、さらには導入する設備の種類などを公庫が総合的に勘案して、最終的な返済年数を判断していると考えられます。
飲食店開業時の運転資金の返済期間の目安は5年から7年
ポイント
- 制度上の上限: 10年以内
- 飲食店の一般的な目安: 5年〜7年
- 対象:物件の契約費用(前払家賃、礼金、仲介手数料)、開業後の仕入・人件費・広告費、10万円未満の消耗品(食器・カトラリー等)の購入費用など
仕入や人件費、店舗運営の蓄えとなる運転資金は、設備資金よりも短い5年から7年が目安です。運転資金は、設備のように形として残り続けるものではないため、公庫の審査においても設備資金より返済期間が短く設定されるのが一般的です。
ここで注意したいのが、食器などの備品購入です。高級店などでこだわりの食器を大量に購入し、合計額が大きくなったとしても、原則として1つあたり10万円未満のものは、消耗品扱いとなり、設備資金ではなく運転資金に分類されます。
資金使途の振り分けを間違えると、想定よりも返済期間が短くなってしまう可能性があるため、予算を組む際にはご注意ください。
飲食店開業時の返済期間は長く設定することがおすすめ
創業融資においては、返済期間を短くして早く返すよりも、実務上認められる範囲でできるだけ長く設定することを強くおすすめします。
一度決まった返済期間を後から延ばす(リスケジュール)のは難しいですが、余裕があるときに予定より早く返す(繰上返済)のはいつでも可能なため、開業当初は返済期間を長く設定して、経営に余裕が生まれてくれば繰上返済で借入金をなるべく早く返していくという戦略がおすすめです。
返済期間を長くすることのメリット・デメリット
期間を長く設定することには、以下の特徴があります。
- メリット
-
- 開業当初の資金繰りが安定する
- 返済期間を長くすれば、毎月の元本返済額が減り、キャッシュフローに余裕が生まれるため、売上が不安定な開業初期において、固定的な支出である返済額が少ないことは大きな安心材料になります。
- 予想外の出費に対応しやすい
- 開業すると予想外の事態が起こることも珍しくありません。工事の遅れ、設備の不調、集客不振、社員やアルバイトの突然の退職などなど。このような想定外の事態が起きても、手元資金に余裕があれば冷静に対処できます。
- 開業当初の資金繰りが安定する
- デメリット
-
- 完済までの総利息額が増える。
- 返済期間が長いと、その分だけ利息を支払う期間も長くなり、総利息額は増えます。
- 完済までの期間が長くなる
- 借入が残っている期間が長くなるため、追加の融資を受けたい場合に、既存の借入残高が審査に影響する可能性があります。
- 完済までの総利息額が増える。
返済期間を長く取るデメリットもありますが、飲食店の倒産理由の多くは赤字ではなく手元の資金不足です。当事務所では、利息の差を気にするよりも、月々の支払額を下げて倒産リスクを減らす方が、創業期には圧倒的に重要と考えています。
もちろん、経営が軌道に乗った場合には、慢心せずに(この点は重要!)、繰上返済などで借入金を早期に返済していけるように努力しましょう。
希望の返済期間の伝え方
希望する返済期間は、書面で申し込む場合は「借入申込書」に、インターネットで申し込む場合は「お申込入力画面」の所定欄に記載します。

公庫の申し込みフォームでは、設備資金と運転資金の返済期間を別々に記載する欄はなく、1箇所にまとめて記載する仕様になっています。そのため、ここでは設備資金の実務上の上限である「10年」と入力して申し込みを提出しましょう。
据置期間

通常、融資を受けると翌月から元本と利息を合わせた返済が始まりますが、据置期間を設定すれば、その期間中はキャッシュの流出を最小限に抑えられます。そして、返済期間と同様に注意すべきなのが、公庫のホームページに書かれている最長期間と、実際の審査で認められる期間には大きなギャップがあるという点です。
公庫ホームページの据置期間と実際に設定できる期間には大きなギャップがある
公庫の公式サイトを見ると、新規開業資金などの据置期間について「5年以内」といった記載が見受けられます。
しかし、この「5年」という数字を鵜呑みにしてはいけません。飲食店の創業融資において、元本の返済を5年間も待ってもらえることは、実務上まずあり得ません。一般的な飲食店の開業では、以下のような期間が実質的な上限の目安となります。
飲食店開業時の据置期間の目安は6ヶ月から1年
飲食店の創業融資において、実務上の目安となる据置期間は6ヶ月から1年です。
公庫は、飲食店経営において「開業から1年以内には事業が軌道に乗る(=元本を返済できるだけの利益が出る)」という前提で審査を行っていると考えられます。そのため、据置期間は事業の立ち上げ期間をカバーする範囲内として、最長でも1年程度で設定されるのが一般的です。
飲食店開業時の据置期間は6ヶ月程度がおすすめ
当事務所では、飲食店開業時の据置期間は、6ヶ月程度に設定することをおすすめしています。
「1年くらい待ってもらった方が安心じゃないか?」と思うかもしれませんが、あえて6ヶ月を推奨するのは、経営の緊張感を保つためです。
据置期間中は、通帳から引かれるのは数千円から数万の利息だけ。このように、支払いが少なくて済む状態が1年も続くと、本当の返済の重さを忘れて、日々の感覚が少しずつ緩んでしまいがちです。いざ1年が経ち、毎月10万、20万という本来の大きな返済がドカンと始まったとき、その変化に対応できず資金繰りが苦しくなってしまうケースが意外と多いと感じています。
「6ヶ月の据置期間内で、元本を返せるだけの利益を出す!」という短期的なキャッシュフロー目標を自分に課すことで、開業直後の最も大事な時期に緊張感を持って経営に取り組むことができます。
据置期間を設定することのメリット・デメリット
据置期間を設定するメリット、デメリットについてまとめました。当事務所では前述したように6ヶ月の据置期間をおすすめしていますが、以下のメリット、デメリットを総合的に考えながら、ご検討ください。
- メリット
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- 開業準備期間の資金繰りが安定する
- 最大のメリットは、売上が立たない時期にお金が減るのを防げることです。 融資が実行されてから内装工事を行い、実際にオープンするまでには1〜3ヶ月ほどかかります。その間は収入がゼロですが、据置期間を設定していれば、この「準備期間」の支払いを利息だけに抑えることができます。開業前の不安な時期に、手元の現金が減らない安心感は非常に大きいです。
- 開業準備期間の資金繰りが安定する
- デメリット
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- 毎月の返済額が増加する
- 据置期間を設定した分、元本を返すための返済回数が少なくなります。例えば、10年(120回)の返済期間で、6ヶ月の据置期間を取ると、残りの9年6ヶ月(114回)で返済していかないといけません。このように、据置期間後の毎月の返済額が増加することに繋がります。
- 完済までの総利息額が増える
- 据置期間中は、利息のみを支払うため、返済期間のトータルで考えると、総利息額は増えます。
- 経営の緊張感が緩んでしまう
- 前述した通り、支払いが少ない状態に慣れてしまうと、「これくらいの売上でもなんとかなる」と錯覚し、経営に対する危機感が薄れてしまいがちです。
- 毎月の返済額が増加する
希望の据置期間の伝え方
希望する返済期間は、書面で申し込む場合は「借入申込書」に、インターネットで申し込む場合は「お申込入力画面」の所定欄に記載します。

据置期間の設定は、「6ヶ月」のように期間を指定するのではなく、「いつまで元本の返済を待ってほしいか(据置期間の終了月)」を計算して入力する必要があります。
もし6ヶ月間の据置を希望するのであれば、「融資を受けられそうな月の半年後」の年月を目安に入力しましょう。厳密な月日の計算で悩む必要はありません。最終的な細かい調整は、その後の面談の場で「開業後半年間は据置にしたい」と直接伝えれば、その通りに手続きを進めてもらえるはずです。
返済期間と据置期間に関するQ&A
- 融資を受けたあと、後から返済期間を延ばすことはできますか?
-
原則として、一度決まった返済期間を後から延ばすと、条件変更(リスケジュール)と見なされて、信用情報に記録が残ります。これにより、公庫を含めた他の銀行でも融資が受けられなくなるリスクが高まります。そのため、最初から余裕を持った期間で申し込むことが鉄則です。
- 返済期間が長いと、2店舗目出店時の融資が受けにくくなりますか?
-
1店舗目の経営状況が、借入返済が十分可能な程度にキャッシュフローを確保できていれば気にする必要はありません。一つの目安として、5年返済で考えたとしても十分に返済が可能なレベルでキャッシュフローを確保できているということを目指してもらえると、安全な経営を目指せるかと思います。
- 据置期間は必ず設定しなければいけませんか?
-
いいえ、必須ではありません。一定の自己資金があり、開業直後から安定した売上が見込める場合は、据置期間なしで申し込むことは問題ありません。ただし、飲食店の創業では、工事の遅れなどの予想外のことが起こる可能性があるため、念のため据置期間を設定しておく方が安全と言えます。
- 店舗の工事が長期に及びそうです。それでも据置期間は6ヶ月に設定するのが良いですか?
-
個別の事情があれば6ヶ月からプラスアルファの据置期間を指定することは問題ないかと思います。その理由をちゃんと面談で伝えるようにしましょう。ただ、個別理由があったとしても、1年以上の据置期間を取ることは難しいと思いますのでその点はご注意ください。
最後に
飲食店経営において、融資の「返済期間」と「据置期間」を正しく設定することは、開業後の資金繰りを安定させるために重要なポイントです。
多くの料理人兼オーナーにとって、借金は一日でも早く返したいものかもしれません。しかし、お店を長く続けていくための最善の一手を常に考えて、財務(資金繰り)の戦略を考えてください。
今回ご紹介した「設備10年・運転7年・据置6ヶ月」という目安は、数多くの飲食店をご支援してきた当事務所の最もおすすめな組み合わせです。この設定をベースに、ご自身の事業計画と照らし合わせながら、無理のない返済プランを立ててみてください。
もし、計画を立てる中で「自分の場合はどう記載するのがベストか?」「この返済額でやっていけるのか?」と迷うことがあれば、一人で抱え込まずにぜひ当事務所にご相談ください。
万全の資金計画は、あなたの料理やサービスに集中するための心の余裕を生んでくれます。あなたが理想とするお店が、長く、安定して愛される場所になることを心より応援しています!


