【2018年版】飲食店のための小規模事業者持続化補助金 採択に近づく経営計画書の書き方

飲食店のための小規模事業者持続化補助金 採択に近づく経営計画書の書き方

小さな飲食店が使いやすい補助金である小規模事業者持続化補助金。申請にあたっては、「経営計画書」と「補助事業計画書」の2つの書類を、自店舗の良さが審査員に伝わるように作成しなければいけません。このブログでは、採択に近づくための「経営計画書」の書き方についてまとめました。

飲食店のための小規模事業者持続化補助金 採択に近づく経営計画書の書き方

この記事は、飲食店にとってのベストな経営計画書の書き方を提案していますが、あくまで当事務所の意見であることをご理解ください。この通りに記載すれば採択されるということを保証するものではありません。当記事を参考にして頂きながら、自店舗の良さが伝わるように、申請者の方が自分なりに良く考えて記載して頂くことが重要です。

(1)経営計画書の全体像

経営計画書の全体像

経営計画書の記載事項は以下の通りです。

  • 応募者の概要…ここでは事務的に応募者の名称や業種等の概要を書きます。
  • 企業概要…自店舗の詳細と提供しているサービスについて書きます。ここで自店舗の現状を説明します。
  • 顧客ニーズと市場の動向…自店舗の市場(商圏)について、お客様の求めているサービスや競合店舗の状況などが過去から現在までどのように変化しているか、将来の見通しはどうかについて書きます。
  • 自社や自社の提供する商品・サービスの強み…競合店と比較した自社の強みと、その強みの根拠としてお客様から評価されている点を具体的に書きます。
  • 経営方針・目標と今後のプラン…今まで書いてきたことを踏まえて、今後の経営方針と具体的なプランについて書きます。

では、前回のブログで解説した3つのポイントを外さないように、申請書を作成していきましょう。

飲食店のための小規模事業者持続化補助金 採択のための3つのポイント

(2)各項目の記載方法

各項目の記載方法

以下からは各項目ごとに詳細な記載方法を解説してきます。

(2-1)応募者の概要

ここは事務的に必要事項を書いていけばOKです。ただし、前回以前に同補助金を受給したことがある方については、今回の補助事業との違いを記載する必要があります。前回のブログで解説した「比較できるものは表形式で記載する」というポイントを押さえて以下のように書きましょう。

(例)

前回 今回
販路開拓先
販路開拓方法
成果
前回との違い

前回以前に受給を受けた方でも申請は可能ですが、過去の受給者は審査上は減点されます。これは出来るだけ多くの事業者に対して支援をしたいという制度の意向があるためです。また、前回と全く同じ内容では採択されませんので、ご注意ください。

(2-2)企業概要

公募要領 記載例

この項目では、自店舗のことを全く知らない審査員にもイメージが湧くように自店舗を紹介することを意識してください。では、まずは公募要領に記載されているコメント(注意書き)を確認しましょう。

※どのような製品やサービスを提供しているかお書きください。また売上げが多い商品・サービス、利益を上げている商品・サービスをそれぞれ具体的にお書きください。

このコメントの指示は必ず守りましょう。自店舗の商品の説明と、記載例にあるような売上が多い商品・利益が多い商品の上位5位までのランキング表は作成しましょう。

では、この項目では以下の内容を順番に書きましょう。

・①店舗の基本情報

具体的には、店舗名、創業年月、業種業態、立地、席数、従業員数、営業日数・営業時間、お店の特徴(利用シーン、サービスなど)等について書きましょう。

ここでは、店舗外観や内装の写真が入るとお店のイメージが伝わりやすいので、ぜひ写真を使ってください

(例)

【店舗の概要】

当店は平成20年に大阪のビジネス街である〇〇駅徒歩圏内に開業した海鮮居酒屋である。店舗の詳細は以下のとおりである。

店舗名 海鮮居酒屋「××」
立地 〇〇
席数 △席

 

店舗外観 店舗内観
(ここに写真) (ここに写真)

複数店舗を経営されている方は、表形式にして一覧で店舗の情報を伝えると良いでしょう。

・②店舗の沿革(歴史)

店舗の創業から現在までの状況について簡単にまとめましょう。店舗の基本情報だけでなく、過去から現在までの沿革を説明することで、よりお店のイメージが伝わります。また、沿革だけでなく、事業主の勤務経験や創業動機も簡単に記載できるとより良いかと思います。

(例)

【沿革】

料理人を務める事業主は、居酒屋チェーン店にて店舗運営のノウハウを学んだ後、個人経営の海鮮居酒屋にて料理人として○年間勤務してきた。これまでの経験を生かして、平成20年に大阪のビジネス街の中心地である〇〇にて、「働き盛りのサラリーマンに新鮮で美味しい海鮮料理を食べてもらいたい」という想いで海鮮居酒屋を開業した。当初は固定客がつかず苦労したものの、チラシの配布などの地道な販促活動の結果、徐々に近隣地域で勤務するサラリーマンの固定客が増加し、開業から約6ヶ月で軌道に乗り、現在まで黒字営業を続けている。近年では、…

・③メニューの紹介と売上・利益の大きい商品の紹介

ランチ・ディナー・カフェなどの時間帯別に商品が異なる場合には、分けて書きましょう。各時間帯別に、主要顧客層、主要商品、客単価、全体売上の中での割合(全体売上のうちランチが3割など)等を説明しましょう。

次に、記載例と同じ形で上位5位まで売上と利益の大きい商品を並べましょう。ここで書いた売上と利益の数字については証拠資料を求められる訳ではないので、きっちりした数字でなくても大丈夫です。(あまりにも実態とかけ離れた嘘を書いてはいけませんが。)

必ずしも記載例通りにする必要はないのですが、様式を合わせる方が無難かと思います。

(例)

【取扱商品】

昼(○時から○時)と夜(○時から○時)での主力商品等は以下のとおりである。

主要顧客層 主要商品 平均客単価 全体売上比率
近隣サラリーマン 海鮮を使った日替り定食等 900円 35%
近隣サラリーマン。昼と比べて年配の方が多い 刺身を中心にした海鮮一品料理と日本酒・ビールなどのアルコール類 3,500円 65%

 

また、売上と利益の大きい商品は以下のとおりである。

売上総額の大きい商品 利益総額の大きい商品
1位 ××××× 〇〇万円 ××××× 〇〇万円
2位 ××××× 〇〇万円 ××××× 〇〇万円
3位 ××××× 〇〇万円 ××××× 〇〇万円
4位 ××××× 〇〇万円 ××××× 〇〇万円
5位 ××××× 〇〇万円 ××××× 〇〇万円

(ここに売上1位のメニューの写真を添付するとより分かりやすい)

(2-3)顧客ニーズと市場の動向

公募要領 記載例

ここでは市場の状況について説明していきます。前回のブログで紹介した一連のストーリーではここの部分にあたります。

では、まずは公募要領に記載されているコメントを確認しましょう。

※お客様(消費者、取引先双方)が求めている商品・サービスがどのようなものか、また自社の提供する商品・サービスについて、競合他社の存在や対象とする顧客層の増減など売上げを左右する環境について、過去から将来の見通しを含めお書きください。

少し表現が分かりづらいですが、顧客のニーズ、競合店の状況、顧客層の動きなどを現時点だけでなく、過去から将来の時系列で記載すれば良さそうです。

では、この項目では以下の内容を順番に書きましょう。

・①自店舗の顧客層の現状

まずは自店舗のメイン顧客層はどういう層で、どのようにニーズを満たしているかを説明しましょう。

(例)

【当店舗の顧客層】

当居酒屋のメイン顧客は、〇〇駅を利用する帰宅途上のサラリーマンである。ボリュームがありお得感の高い造り合わせを目玉商品とし、サラリーマン層から支持を得てきた。

・②顧客層と競合店の動向

次にメインの顧客層が過去からどのように動き、今後どうなる見込みかを書きましょう。ここで競合店の動きについても合わせて書きましょう。

(例)

【顧客層と競合店の動向】

近年では若者のアルコール離れが進んでおり、新規の固定客獲得が難しくなっている。また、チェーン展開している格安の居酒屋が徒歩圏内にオープンしてから新規の客数が約10%減少している。今後も若者のアルコール離れは進むと見込まれ、競合店舗との競争はさらに厳しくなることが予想される。

・③ターゲットとする顧客層のニーズ

今後の方向性として、新たな顧客層の開拓が必要な場合には、新たにターゲットにする顧客層のニーズがどこにあるか記載する必要があります。ここで書いたニーズに対して、自社の強みがマッチしていることを後ほど書いていくことになります。

(例)

【顧客層のニーズ】

若者の宴会需要は減少しているものの、ランチタイムにおける若者の客数は増加傾向にある。特に近隣ではランチタイムに営業している海鮮居酒屋がほとんどないため、お造り定食や海鮮丼などの売れ行きがよく、平日のピークタイムでは行列ができている。このことから、海鮮料理自体への市場のニーズは強いと考えている。

現状の顧客層を変えずに、同一顧客層で客数アップを狙う場合には、現状の商品がいかに顧客に受けているかを説明しましょう。

(例)

【顧客層のニーズ】

若者の宴会需要は減少しているものの、旧来からの固定客の来店頻度は増加傾向にある。顧客からは、チェーン店では満足な料理が味わえないため引き続き当店を利用していると評価の声を頂いている。料理の質で顧客のニーズを満たせているため、固定客の来店増加につながっている。

公募要領のコメントに戻りますが、ここではお客様のニーズを捉えていることを表現することが求められています。ですので、新たな顧客のニーズがどこにあるかはわからないということは書かずに、仮説でも良いので「ニーズはここにある」ということをはっきり書きましょう。

(2-4)自社や自社の提供する商品・サービスの強み

公募要領 記載例

ここでは自社の強みについて説明していきます。前回のブログで紹介した一連のストーリーではここの部分にあたります。

では、まずは公募要領に記載されているコメントを確認しましょう。

※自社や自社の商品・サービスが他社に比べて優れていると思われる点、顧客に評価されている点をお書きください。

ここで重要なのは、以下の2点です。

  1. 自社の強みは競合店よりも優れていると言えるか?競合店との違いが明確になっているか?
  2. 自社の強みが評価されていることを言えるか?評価されていることを裏付ける数字(リピート率や新規顧客紹介率、客単価が高いなど)や顧客からの声、メディアでの掲載実績などはあるか?

では、この項目では以下の内容を順番に書きましょう。

・①自店舗の強み

まずは自店舗の強みを書きましょう。強みを何点か書くことになると思うので、この箇所は箇条書きが良いかと思います。気を付けるポイントは、競合店と比べて優れている点を審査員に伝えることです。違いが伝わりづらいと感じたら、「一般的には○○だが、当店では××である」というように直接記載するとよりわかりやすくなります。

(例)

【当店の強み】

当店の強みは以下の3点である。

  1. 食材へのこだわり…当店の海鮮は全て〇〇市場から仕入れており、店主自らが鮮度を確認して仕入れを行なっている。一般的な海鮮居酒屋では××だが、当店では△△という工夫により、お客様に常に鮮度が高い良質の海鮮料理を提供できるように努力している。
  2. 季節に応じたメニュー提供…
  3. お客様とのコミュニケーション…

・②顧客から評価されている点

次に紹介した強みと関連して、それが評価されている実績を書きましょう。ここでは特に、具体的に記載するということを心がけてください。

(例)

【顧客から評価されている点】

  1. 料理の味・質…食材や料理方法へのこだわりにより、提供する商品では顧客から高い評価を頂いている。特にランチタイムに提供する○○定食が好評であり、グルメサイトの△△では××という評価を得ている。
  2. 季節のメニュー…

あくまで個人的な意見ですが、飲食業という業種から考えると、「料理が美味しい」というアピールが一番伝わりやすいと思います。まずは直球で、料理の味をアピールできないかから考えてみましょう。

(2-5)経営方針・目標と今後のプラン

公募要領 記載例

ここでは自社の強みと市場の環境を踏まえて、自社の経営方針や今後のプランを説明していきます。前回のブログで紹介した一連のストーリーではここの部分にあたります。

では、まずは公募要領に記載されているコメントを確認しましょう。

※1.~3.でお書きになったことを踏まえ、今後どのような経営方針や目標をお持ちか、可能な限り具体的にお書きください。また、方針・目標を達成するためにどのようなプラン(時期と具体的行動)をお持ちかお書きください。

ここで重要なのは、以下の2点です。

  1. 「お書きになったことを踏まえ」と書いてあるので、各項目との繋がり(ストーリー)を意識する。
  2. 「可能な限り具体的に」「(時期と具体的行動)」とかなり具体性を求められているので、指示通りに具体的に書く。

では、この項目では以下の内容を順番に書きましょう。

・①経営方針

まずは経営方針から書きましょう。経営方針は目指すべき姿(ビジョン)です。経営方針は、自店舗の強みやターゲットとする顧客層(市場)を踏まえて書きますが、さらに社会性(社会への貢献)があれば綺麗にまとまると思います。

(例)

【経営方針】

旬の食材、地元の食材の美味しさをお客様に感じてもらえる海鮮居酒屋を目指したい。また、地元の食材の提供を通じて、地域の活性化に貢献できる居酒屋を目指したい。

ここでは「地域の活性化に貢献」という部分が社会性のアピールになります。「自社の強みを生かして、お客様に喜んでもらい、地域社会にも貢献できる」という流れで考えてみましょう。

・②目標

次に経営目標を書きましょう。ここでは、目標とする経営数字をはっきり書きます。あくまで経営方針に基づいた目標を書きますので、来月の売上は○万円を目指しますのような短期的な目標でなく、3年間から5年間の期間で達成したい目標を書きましょう。

(例)

【目標】

「あの居酒屋に行けば、いつでも旬の食材・地元の食材が食べられる」というイメージを顧客に根付かせることで、今後3年間でリピート率・客単価を向上させ、売上増加を目指す。

現状 3年後の目標
リピート率 〇〇 % 〇〇 %
顧客単価 〇〇 円 〇〇 円
売上高 〇〇 万円 〇〇 万円

・③今後のプラン

最後に今後のプランを書きましょう。公募要領にもあったように、時期と行動をできる限り具体的に書きましょう。3年後のことなんて分かるわけない!と思われる方もいるかと思いますが、あくまで現状でのプランを考えるだけですので、必ずそのプランを実行しないといけない訳ではありません。

(例)

【今後のプラン】

  • 2018年8月:旬の食材・地元の食材が食べられるということをアピールするために、内装・レイアウト・メニュー表を一部変更(補助事業計画に詳細を記載)
  • 同年9月:季節メニューとして、○○という新商品を開発予定
  • 同年10月:新メニューのチラシを近隣に配布
  • 2019年:昨年度の新メニューの売上を分析し、ニーズが高い食材での新メニュー開発を予定

補助事業として申請予定の内容については、分かりやすいようにその旨を書いておきましょう。今後のプランでは具体的な時期の記載が求められていますので、少なくとも1年間分は「○月に××を実施予定」と具体的に書きましょう。

(3)最後に

最後に

以上で、一通り記載できたと思いますが、もう一度最初から読み直して、ストーリーに一貫性があるか確認してください。話が繋がらない箇所があれば各項目ごとに微調整していって、最終的には初めて読む人にとってもストーリーが伝わるように意識してください。

おそらく自分一人では難しいので、完成したら何人かの人に読んでもらって感想をもらうのが良いと思います。

◎◉ この記事のポイント ◉◎

  1. 各項目ごとに公募要領で求められているポイントを外さずに、出来るだけわかりやすく書く。
  2. 各項目で記載したことがストーリーでつながっていることが重要。
  3. 完成したら何人かに読んでもらって、分かりづらい点がないか確認してもらう。
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