飲食業の創業融資。どこで借りればいい?

飲食業の創業融資を受けるにあたって、どこを選べば良いのか。解説記事を作成しました。

飲食業の創業融資。どこで借りればいい?

無担保・無保証の2大創業融資制度を知る

その1 日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫とは?

➡️ 政府が100%株主の金融機関です。

まず押さえておきたいのは、日本政策金融公庫の創業融資制度です。

日本政策金融公庫とは、平成20年10月に旧国民生活金融公庫、旧農林漁業金融公庫、旧中小企業金融公庫の3公庫を統合した政府系金融機関です。国(具体的には財務大臣や経済産業大臣等)が100%の株式を保有しています。

平成20年以前においては、旧国民生活金融公庫が創業融資を主に担当していたので、「国金(こっきん)からお金を借りた。」と言っていた先輩経営者が思い当たる方も多いのではないかと思います。

普通の銀行とどう違う?

➡️ 国の政策実現のために、リスクが高い貸付も行なっています。

日本政策金融公庫は、国が株主であるため、政策の影響を大きく受けます。国の政策が実現するように、リスクが高い貸付も行なっているのが日本政策金融公庫です。

例えば創業を増やすこと(開業率を上げること)は、国の政策目標のひとつです。ただし、創業時は事業が上手くいくのかどうかはわからないので、資金を貸すにはリスクが高いため民間の金融機関ではお金を出せない。このような貸付に対して積極的に取り組んでくれるのが日本政策金融公庫です。

その2 地方自治体(都道府県や市区町村)の制度融資

制度融資とは?

➡️ 地方自治体と銀行と信用保証協会の3者が協力して行う融資。

国の政策で貸付を行うのが日本政策金融公庫なら、地方自治体の政策で貸付を行うのが制度融資です。制度融資は、地方自治体・銀行・信用保証協会の3者が協力して創業者に融資しますが、それぞれの役割は以下の通りになります。

  • 地方自治体:銀行への資金供給、事業者が支払う利子を一部補填(利子補給)
  • 銀行:事業者への貸付
  • 信用保証協会:銀行が行なった貸付に対する保証(事業者がお金を返せなくなったら、事業者の代わりに信用保証協会が銀行にお金を返す。その後事業者は信用保証協会に少しずつでも借入金の返済をしないといけない。)

制度融資の特徴は?

➡️ 地方自治体ごとに融資条件が異なるので、市区町村の制度融資を使うか、都道府県の制度融資を使うか良く調べてから申請が必要。

日本政策金融公庫と異なり、制度融資は地方自治体の意向を反映しているため、各自治体ごとに融資の内容や条件が異なっています。実際に制度融資を受けるにあたっては、市区町村と都道府県の制度融資を調べてどちらの条件が良いかを比較して申請する必要があります。(両方申請することも可能です。)

 

2大創業融資制度から選ぶ

2大創業融資制度のうち、どちらから借りればいいのか?

➡️ 飲食業なら日本政策金融公庫がおすすめ。

飲食業の開業は、日本政策金融公庫がおすすめです。

制度融資は、以下の点から飲食業開業に不向きになっています。

①  制度融資は許認可が下りてからしか入金されない。

これが飲食業には厳しい条件になります。「融資の入金には保健所の営業許可が必要」→「営業許可を取るためには店舗がある程度完成していないといけない」→「そのためには物件取得費や工事費の一部を借入ではなく、自己資金で支払わなければならない」ということになります。

つまり、営業許可前に支払う金額は融資対象にならないため、これについては全額自己資金で支払う必要があるということです。

ちなみに日本政策金融公庫では必要な許認可が取れる前でも融資の入金が行われるので、物件の取得費用や工事の前払金も融資で充当することが可能です。

② 制度融資は審査に時間がかかる。

飲食店にとって、開業までの時間が掛かるほど機会損失が大きくなり、空家賃も発生することになることから、物件の契約後はなるべく早く営業することが重要となります。

しかし、制度融資の場合は、融資面談から融資実行までの期間が日本政策金融公庫と比べて長くなる場合が多いのです。各自治体により異なるので、詳細は自治体に直接確認してほしいのですが、長ければ2ヶ月程度かかることもあります。これは、制度融資の場合は融資に関連している組織が多い(地方自治体、銀行、信用保証協会の3者)ので、融資の決定に時間がかかるためです。

ちなみに日本政策金融公庫は、公庫だけで融資の決定をするため、制度融資に比べてスピーディーに融資が進みます。(早ければ2週間から1ヶ月以内で融資が決定する。)

では制度融資のメリットは無いのか?

➡️ 金利負担面でのメリットがあります。

制度融資は地域によって融資条件や内容が異なりますが、一般的には制度融資を利用する方が日本政策金融公庫よりも金利が低くなります。特に、地方自治体の利子負担等を入れると、事業者の金利負担が1%を下回ることがあります。日本政策金融公庫での新創業融資の基準金利が2%程度であることを考えると、金利面でのメリットがあります。

制度融資のデメリットである入金のスケジュール調整が可能であれば、金利負担を考えて制度融資を検討するのも良いかと思います。

ちなみに2大創業融資制度を両方使うことはできるのか?

➡️ 注意することは多いが、両方使うことは可能。

両方の融資制度を併用することは可能です。この場合、借入申込にあたって両方から満額の融資が出たと仮定して事業計画を作成することになります。例えば、日本政策金融公庫で7百万円、制度融資で3百万円を借りたい場合には、日本政策金融公庫での申請書には他からの借入として制度融資の3百万円を記載して申請することになります。(制度融資の申請書はこの逆です。)

ただしこの場合は、どちらかで融資が下りないや減額されたなどがあると事業計画を大きく見直す必要があります。また、日本政策金融公庫と制度融資では細かな要件で違いがあるので、それぞれの制度を良く確認してから申請する必要があります。

同時申請の場合は注意すべきことがたくさんあるので、融資に詳しい公認会計士や税理士等の専門家に一度相談することをおすすめします。

 

2大創業融資制度以外について

普通の銀行から創業融資はしてもらえないのか?

➡️ 最近は一般の金融機関も創業融資に積極的になりつつあります。一度最寄りの信用金庫に相談に行くと良いかも知れません。

最近では、金融庁の金融機関指導の方針も変化してきており、特に信用金庫・信用組合・地方銀行で創業融資に力を入れるところが増えてきています。これらで融資を受ける場合には、基本的には信用保証協会の保証付き融資になります。

2店舗目以降もスムーズに資金調達するために、金融機関との取引実績をつくっておきたいなどの考えがある場合は一度地元の信用金庫に相談に行かれても良いかと思います。この場合は、規模の大きな銀行よりも、規模の小さい銀行を選んでください。特に地元の信用金庫・信用組合がおすすめです。

また、日本政策金融公庫では1千万円以上の借入は難しいため、借入額が大きくなる場合には、「日本政策金融公庫での融資」と「地元信用金庫での保証協会付き融資」の協調融資などの対策を考える必要があります。こういった場合には、地元の信用金庫での融資を検討する必要があります。

 

◎◉ この記事のポイント ◉◎

  1. 飲食業の創業融資は、日本政策金融公庫がおすすめ。
  2. 制度融資は入金が許認可取得後のため、物件取得や工事代金の前払いなどには使えないので注意。一方で日本政策金融公庫よりも低金利というメリットもあるので、スケジュール調整が可能であれば検討の余地あり。
  3. 日本政策金融公庫と制度融資の併用も可能。ただし注意点多数のため出来れば専門家に相談を。

 

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