飲食店開業で失敗しないための創業融資の相談先とは?

飲食店開業で失敗しないための創業融資の相談先とは?
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この記事を書いた人
溝川裕也

大阪食堂サポート会計事務所代表 溝川裕也

公認会計士、税理士、社会保険労務士、ワインエキスパート

これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、融資支援100件以上。料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。

飲食の現場で腕を磨いてきたあなた。そろそろ「自分の店を持ちたい」と考えて準備をスタートすると、まず立ちはだかるのが「資金」の問題です。物件取得、内装工事、厨房設備…気づけば1,000万円以上が必要に。創業融資を受けようと思ったものの「日本政策金融公庫?制度融資?商工会議所?税理士?…一体どこに相談すればいいの?」そんな疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

安心してください。創業融資の相談先選びは、思っているほど難しくありません。

私たちは会計事務所として、飲食店の融資支援を100件以上サポートしてきました。その経験から言えるのは、適切な相談先を選べば、創業融資が成功する可能性は飛躍的に高まるということです。

この記事では、現場経験を積んできた料理人のあなたが、失敗せずに創業融資を受けるための相談先選びを、実践的に解説していきます。

あなたの長年の経験と情熱を、理想の飲食店の開業という形で実現しましょう!

目次

飲食店開業の創業融資相談先一覧表

結論として、飲食店の創業融資相談先のそれぞれのメリット・デメリットをまとめた一覧表を作成しました。それぞれの相談先の詳細は次の章から解説していきます。

スクロールできます
相談先メリットデメリット
日本政策金融公庫・相談無料
・融資をしてくれる先なので具体的な融資の制度や金利について説明を聞くことができる
・聞いて良いことと聞いたらダメなことを気にしながら相談しないといけない
・創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
信用金庫や地方銀行・相談無料
・融資をしてくれる先なので具体的な融資の制度や金利について説明を聞くことができる
・相談に行った支店や担当者によって熱心に相談に乗ってもらえるかは微妙な場合がある
・聞いて良いことと聞いたらダメなことを気にしながら相談しないといけない
・創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
商工会議所・商工会・相談無料
・創業融資の金利が低くなる可能性がある
・融資制度だけでなく経営全般も相談可能
・入会を求められる場合がある
・創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
・セミナー参加が忙しいと難しい
中小企業庁のよろず支援拠点・相談無料
・幅広い相談が可能
・創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
・専門家は選べない場合がある
生活衛生同業組合・金利が低い制度が利用可能
・融資以外のサポートが充実
・入会金や会費が発生する
・創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
・融資の手続きに時間がかかる
仕入先業者・相談無料
・独立前の信頼関係を活かせる
・業者間の横の繋がりを活用できる
・契約が前提となる場合が多い
・融資は専門ではない
税理士・通常は相談のみは無料
・書類作成から金融機関との段取りまでサポート
・融資成功の確実性が高まる
・開業後の税務相談も可能
・融資の計画書を作成依頼した場合に手数料が発生する
・税務顧問契約が必須の場合がある

創業融資の相談先ごとのメリット・デメリット解説

それぞれの相談先のメリットとデメリットを理解することが、適切な相談先を選ぶ第一歩になります。ここからは、各相談先ごとのメリット・デメリットを、飲食業の融資支援を100件以上対応してきたプロの目線で紹介していきます。

日本政策金融公庫

ポイント

融資先であって公的機関なので相談する安心感はありますが、融資先である手前、カジュアルに何でも聞くことは難しい。

相談に行く際は、自分自身で創業融資のことをしっかり調べて知識をつけてから行くのが良いでしょう。

飲食店の創業融資を受ける方のほとんどが利用している銀行が、日本政策金融公庫です。融資を実行してくれる銀行ですが、創業融資のカジュアルな相談にも対応してくれます。

メリット
  • 相談無料
  • 融資をしてくれる先なので具体的な融資の制度や金利について説明を聞くことができる
    • 若者・女性・シニアの開業や、従業員の雇用計画があるなど、条件を満たせば金利が低くなる融資制度を具体的に教えてもらえます。
デメリット
  • 聞いて良いことと聞いたらダメなことを気にしながら相談しないといけない
    • 相談時点では審査と関係はないのですが、借りられるだけ貸してほしいですのような、担当者から「この人大丈夫?」と思われるような内容は質問しないようにしましょう。
  • 創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで一般的な助言のみ
    • 創業計画書などの重要書類について、具体的な作成代行はもちろんのこと、具体的な助言も期待できません。あくまで一般的な書き方や改善点のアドバイスに留まります。

日本政策金融公庫への相談窓口は、大きく2つです。

  • 各支店(全国に支店があるので最寄りの支店で相談しましょう、オンライン相談可)
  • ビジネスサポートプラザ(東京、名古屋、大阪にあります、オンライン相談可)

相談に行く際は、ホームページから事前予約をして相談にいきましょう。

信用金庫や地方銀行

ポイント

融資先になる可能性があるので具体的な融資の制度などについて聞けることはメリットですが、気軽に何でも質問することは難しいでしょうし、銀行担当者は忙しいのでゆっくり相談に乗ってもらうのは難しいと思います。

公庫と同じように、自分自身で創業融資のことを調べてから相談に行くのが良いでしょう。

銀行選びの記事でも紹介したように、飲食店の創業融資では、保証協会付き融資も重要な選択肢のひとつ。

保証協会付き融資の窓口となるのは、民間の銀行になりますので、出店予定地から最寄りの信用金庫や地方銀行に相談に行くことも選択肢のひとつです。どの銀行に相談に行くべきなの?という点もこちらの記事で解説しています。記事にも記載しましたが、創業者は大手の都市銀行ではなく、信用金庫・信用組合・地方銀行のうち、保証協会付き融資の実績が多いところを選んでください。

メリット
  • 相談無料
  • 融資をしてくれる先なので具体的な融資の制度や金利について説明を聞くことができる
    • 地方自治体が保証料を負担してくれる制度融資や、信用保証協会の創業者向け融資制度など融資制度を具体的に教えてもらえます。
デメリット
  • 相談に行った支店や担当者によって熱心に相談に乗ってもらえるかは微妙な場合がある
    • 公庫と違い、支店の方針や担当者によって、創業融資への熱心さが微妙な場合があります。「あまり協力的ではないな」と感じたら、すぐに別の銀行も含めて検討し直す勇気が必要です。
  • 聞いて良いことと聞いたらダメなことを気にしながら相談しないといけない
    • 公庫と同じく、聞いても良いことと、聞くとまずいことの線引きはご自身で責任を持って質問しましょう。
  • 創業計画書などの書類の作成方法の指導は期待できない
    • 創業計画書などの重要書類について、具体的な作成代行はもちろんのこと、助言も期待できません。銀行員は忙しく具体的な助言をもらうのは難しいでしょう。

商工会議所・商工会

ポイント

融資制度を中心に補助金等も含めて国からの支援策全般について相談可能な点が強み。

あくまで相談対応のみなので、相談時間の確保に加えて自分で書類一式を作る作業時間も必要ですし、相談員からの指摘で書類を修正したりなど返って時間がかかる可能性は高いです。

商工会議所・商工会とは、地域の事業者が集まって中小企業や創業者を支援する団体であり、創業相談先の有力な選択肢の一つです。この二つの組織はよく似ていますが、あなたの出店するお店の場所によって管轄が異なります。具体的には、「〇〇市」という名称の地域は商工会議所の管轄であることが多く、「〇〇町」や「〇〇村」という名称の地域は商工会の管轄であることが多いです。創業者支援の内容に大きな違いはありませんので、ご自身の出店エリアに合わせた窓口に相談してください。

メリット
  • 相談無料
  • 創業融資の金利が低くなる可能性がある
    • 特定創業支援等事業としての、商工会議所主催セミナーや個別指導を受けることで創業融資の金利が低くなる制度の利用が可能です
  • 融資制度だけでなく経営全般も相談可能
    • 創業後の販売促進の対策など幅広い相談にも応じてくれます。
デメリット
  • 入会を求められる場合がある
    • 相談自体は無料ですが、継続的なサポートを受けるには入会(会員登録)を求められる場合があります。年会費は1万円〜2万円程度(地域で異なる)ですが、費用対効果を考えて検討が必要です。
  • 創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
    • 創業計画書等の作成代行はできません。相談員からの助言をもとに自分でイチから資料を準備したりする必要があり、結果的に時間と手間がかかる可能性が高いです。
  • セミナー参加が忙しいと難しい
    • 融資優遇の特典を得るためのセミナーなどが開催されますが、飲食業は準備期間も開業後も非常に忙しいため、セミナーの時間確保が難しい場合があります。

中小企業庁のよろず支援拠点

ポイント

よろず支援の名前の通りに経営のお困りごと全般について相談できることが強み。

創業相談も対応できますが、開業後の売上拡大についての相談実績が大半のため、創業融資の相談よりは、マーケティングなど売上拡大の相談などの方が使い勝手が良いと思います。

よろず支援拠点とは、全国の都道府県に設置されている国が運営する無料の経営相談所です。その名前の通り、経営に関する「よろず(何でも)」の相談に乗ってくれるのが最大の強みです。この拠点には、中小企業診断士、ITコーディネーター、デザイナーなど、様々な経営課題に対応できるように専門家(コーディネーター)が多数在籍しており、あなたの具体的なお悩みに応じて最適な専門家を紹介してもらえます。

メリット
  • 相談無料
  • 幅広い相談が可能
    • 融資の相談だけでなく、マーケティング、Web活用、デザイン、集客、人手不足対策など、あなたの店舗運営に必要なあらゆる課題を相談できます。
デメリット
  • 創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
    • 創業計画書などの重要書類について、具体的な作成代行はしてくれません
  • 専門家は選べない場合がある
    • 専門家は多数在籍していますが、担当分野ごとに複数名の専門家がいるとは限らないので、自分で専門家を細かく選ぶことは難しい場合があります。

生活衛生同業組合

ポイント

飲食業の創業融資で金利が低くなる制度が使えることが最大のメリット。入会が前提なので、会費と金利の優遇幅を比較して費用対効果を判断しましょう。

入会すると、食品国民健康保険に加入できるなどの特典もあります。

生活衛生同業組合とは、理容、美容、飲食、旅館など、公衆衛生と国民生活に密接に関連するサービス業を営む事業者が、自主的に組織した団体です。飲食業に関連する主な組合には、飲食業生活衛生同業組合のほか、麺類、中華料理、すし商、喫茶飲食、社交飲食業など、専門分野に特化した組合があります。

これらの組合は各都道府県に設置されますが、地域によっては組合がない場合もあるため、入会を検討される方は、出店予定地の組合をまずお調べください。

どの組合に加入するかは、例えば中華料理店の場合、飲食業生活衛生同業組合と中華料理生活衛生同業組合のどちらも選択肢に入ります。それぞれの組合で利用できるサービスや特典が異なるため、その点を調べてから加入先を決めるのが賢明です。

メリット
  • 金利が低い融資制度が利用可能
    • 日本政策金融公庫の「振興事業貸付」という、一般貸付よりも金利が低い特別な制度(0.7%程度金利が優遇)を利用できます
  • 融資以外のサポートが充実
    • 食品国民健康保険への加入が可能になったり、飲食店経営に関連した情報提供、研修、共済制度など、融資以外の経営のサポートも得られます
デメリット
  • 入会金や会費が発生する
    • サービスを利用するには、まず組合員になる必要があります。当然ながら入会金や年会費が発生するため、融資の金利優遇と会費のバランスを慎重に判断する必要があります。
  • 創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
    • 創業計画書などの重要書類について、具体的な作成代行はしてくれません。ただ、組合の担当者の方によってはとても熱意を持って助言を行ってくれる方もいます。
  • 融資の手続きに時間がかかる
    • 組合を通した融資(振興事業貸付)は金利が低くなりますが、組合の推薦書が必要になる分、公庫に直接申し込むよりも1週間から2週間程度、時間がかかる傾向があります。急いで資金が必要な場合は注意が必要です。

各組合の全国連合会のホームページを以下にまとめていますので、こちらから各都道府県の組合があるかご確認ください。

仕入先業者

ポイント

独立前からお付き合いのある業者さんだと既に信頼関係ができているので相談しやすい。横の繋がりで色々な業者さんを紹介してもらえる点が一番のメリット。

ただし、融資の専門家ではないので、資金調達の相談は「専門家への橋渡し役」と割り切りましょう。

飲食店の現場経験を持つあなたであれば、既に信頼できる仕入業者さんとの繋がりがあるのでは?

飲食業の場合、この仕入業者さんとの付き合いを活かして、開業の相談をするのは非常に有効な手段です。多くの仕入業者さんは、自社の利益に繋がるため、積極的に開業支援を行っています。

例えば、以下のように、中古厨房機器の販売会社や、酒類・食材の卸売業者などが、独自の開業サポートを提供しています。

メリット
  • 相談無料
  • 独立前の信頼関係を活かせる
    • 独立前から取引業者として良いお付き合いがあれば、気兼ねなく相談しやすいという精神的なメリットは非常に大きいです。
  • 業者間の横の繋がりを活用できる
    • 業者さんは内装、設備、販促など別の専門業者との繋がりを豊富に持っている可能性も高いです。自分一人では見つけにくい、信頼できる業者さんをスムーズに紹介してもらいやすい点は魅力です。
デメリット
  • 契約が前提となる場合が多い
    • 支援の目的は「開業後の契約」にあるため、支援を受ける過程で、その業者との契約を半ば決めてから相談を進めることになります。このため、複数業者を比較検討しにくくなる可能性があります。
  • 創業計画書などの書類の作成方法などはあくまで助言のみ
    • 創業計画書などの重要書類について、具体的な作成代行はしてくれません。ただ、組合の担当者の方によってはとても熱意を持って助言を行ってくれる方もいます。
  • 融資は専門ではない
    • 創業融資の専門的なノウハウや最新の金利情報を常に把握しているわけではないため、提携の税理士や融資コンサルタントに相談を丸投げされる可能性が高いです。

税理士

ポイント

融資に関する書類作成や段取りを全て任せて、メニュー企画など他の開業準備に集中したい人におすすめの選択肢。

税理士の選び方が重要になってくるので、融資支援の実績、飲食業に詳しいかどうか、人柄が合いそうかなどいくつかの観点から選びましょう。

税理士は税務の専門家ですが、最近は融資支援に力を入れている税理士事務所が多く、税理士への相談も有力な選択肢です。相談する税理士選びのポイントと、依頼した場合のメリット・デメリットについてまとめました。

point
融資支援の実績と熱意があるか?

その税理士が、税務だけでなく、融資支援に力を入れているかをホームページなどで確認しましょう。ホームページに書かれている実績や成功事例を見て、あなたの挑戦に本気で取り組んでくれるかを判断するのが手っ取り早い方法です。

point
飲食業の融資経験実績が豊富か?

建設業、IT業、飲食業など、業種によって資金計画の作り方は大きく異なります。業界特有の原価率や有利な融資制度に精通している税理士の方が、融資をより確実性を持って進めることが可能です。必ずホームページなどで飲食業の支援実績を確認しましょう。

point
「認定支援機関」の登録があるか?

認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)とは、国から中小企業の経営をサポートする専門知識と実務経験を認められた専門家のことです。認定支援機関に登録されている税理士は、通常の融資だけでなく、優遇金利が使える融資制度や補助金、税制の優遇制度の活用に精通しています。ぜひ、認定支援機関に登録されている税理士を選んでください。

認定支援機関に登録されているかどうかは、中小企業庁の検索システムを使って確認できます。

メリット
  • 通常は相談のみは無料
  • 書類作成から金融機関との段取りまでサポート
    • 融資の計画書作成を、書類作りから金融機関への提出段取りまで専門的な視点でサポートしてくれます。あなたの労力は最小限で済みます。
  • 融資成功の確実性が高まる
    • 金融機関が納得する「質の高い事業計画書」を作成できるため、融資の成功率が向上し、否決されるリスクを下げられます。
  • 開業後の税務相談も可能
    • 融資成功後もそのまま開業後の税務顧問として、経理や税金のサポートを受けられます。
デメリット
  • 融資の計画書を作成依頼した場合に手数料が発生する
    • 融資の計画書作成を依頼する場合、当然ながら手数料(多くは融資成功時の成功報酬)が発生します。必ずホームページで手数料の金額を確認しましょう。
  • 税務顧問契約が必須の場合がある
    • 事務所によっては、融資支援の条件として開業後の税務顧問契約が必須となっている場合があります。事前に契約期間や料金体系を確認してから相談した方がスムーズです。

その他の相談先

これまでご紹介した主要な相談先以外にも、情報収集やアドバイスを得るための相談先があります。それぞれの特徴と、創業融資における立ち位置を理解して、賢く活用しましょう。

  • 開業している友人や先輩

一番身近な相談先ですが、お金の話は仲が良い人でも話しづらい側面があります。実際の経験談を聞けるのはメリットですが、個人の成功例があなたの店に当てはまるとは限りません。一人の話を鵜呑みにせず、あくまで情報の一つとして捉えましょう。

  • 信用保証協会、地方自治体の制度融資相談窓口

これらの窓口は、融資の保証や優遇制度(金利・保証料補填)に関する情報を提供してくれます。

  • 注意点:どちらもお金を貸す窓口ではありません。融資の申し込みは必ず銀行を通じて行う必要があるため、結局は銀行に相談に行った方が話が早いという流れになることが多いです。制度の概要を知るための情報収集として活用しましょう。
  • 民間の融資コンサルタント

行政書士や中小企業診断士のほか、民間企業などが、融資支援サービスを提供しています。

  • 役割:融資知識に精通しており、事業計画書の指導や金融機関との交渉サポートを行います。
  • 注意点:専門知識は深い反面、依頼手数料が割高になる可能性が高いです。費用対効果をしっかり検討し、実績豊富な税理士事務所と比較してから依頼することが重要です。

【タイプ別】ベストな創業融資相談先の結論

あなたの貴重な時間と労力をどこに投じるか?それが創業融資の成功と、開業後の店の成否を分けます。あなたのスタイルと準備期間に合わせた、最適な相談先ルートの結論をお伝えします。

段取りや書類作成などは任せて他の開業準備に集中したい人向け

結論

融資に強い税理士(認定支援機関)に相談し、融資の段取りや書類作成を二人三脚のチームで進めていきましょう。ただし、開業後の顧問契約の内容や料金については、依頼前にしっかり確認してください。

最高の食材選びに信頼できる卸売業者さんの力を借りるように、融資という専門分野には、実績のある税理士の力を借りるのが最も合理的です。

税理士という強力な「チームメンバー」を加えることで、料理人兼オーナーであるあなたが、本当に重要な開業準備に集中することができます。その結果、より質の高いお店が生まれ、成功に近づくという、これが最も合理的で最速、かつ確実な融資の進め方になります。ただし、依頼する税理士の実績やあなたとの相性は非常に重要です。「開業後の長い付き合いになるチームメンバー」を選ぶつもりで、一人だけでなく何人かに話を聞き、一番信頼できそう、うまくやっていけそうという方を選んでくださいね。

融資制度の相談はしたいが、書類作成などは自分で対応できる人向け

結論

  • 商工会議所・商工会
  • 中小企業庁のよろず支援拠点
  • 生活衛生同業組合
  • 税理士(作成代行ではなくアドバイスのみ)

に相談に行って、融資制度の相談に乗ってもらいないが、自分で書類作成や段取りなどを進めていきましょう。

「制度融資や補助金の優遇情報は欲しいけれど、相談に乗ってもらいながらであれば書類作成は自分でできる」という方は、このルートが適しています。

公的な支援機関や税理士に相談することで、金利の優遇措置経営に関する幅広いアドバイスを得ながら、融資の準備を進めることができます。

しかし、このパターンの最大の課題は、「融資実行までに時間がかかる」ことです。各支援機関の指導を受けながら書類を何度も修正する手間が発生し、創業融資は時間との戦いという側面もあります(実行が遅れるとカラ家賃が発生するなど)。融資準備を最速かつ確実に進めたいという方は、前に紹介した「専門家チームを活用する」ルートを強くおすすめします。

他の開業準備を進めながら、創業融資の段取りを全て自分で進めたい人向け

結論

  • 日本政策金融公庫
  • 信用金庫や地方銀行

に直接相談し、融資準備を最速で進めましょう

「融資の制度調べも、書類作成も、全部自分で完璧にこなしたい!」という方は、最終的な融資先である公庫や、地域の銀行に直接相談に行くことが、最短・最速で資金調達を完了させる方法になります。

ただし、プロの料理人であるあなたの本当に大切な仕事は、集客できる物件選び、メニュー企画、最高のオペレーションを考慮した厨房配置など、開業後の収入に直結する準備のはずです。この最重要準備を完璧にこなしながら、融資の複雑な手続きまで全て自分一人でやりきるというのは、正直、現実的には非常に難しい道のりです。

本当に重要な開業準備に専念し、融資対応にかける時間を最小限に抑えたい方は、前に紹介した「専門家に任せるルート」を強くおすすめします。

創業融資の相談先選び Q&A

複数の相談先に同時に相談しても良いですか?

はい、問題ありません。

特に開業準備の初期段階では、公庫、商工会議所、税理士など複数の相談先に話を聞きに行くことをおすすめします。それぞれの得意分野を比較し、最適なパートナーを見極めるためです。ただし、協調融資を除いて、複数の金融機関に同時に融資の申込を行うのはやめておきましょう。同じ事業計画で別々の金融機関に同時に融資を申し込んだ場合、資金使途違反としてどちらの申込も否決される可能性があります。

融資の相談は「物件を決める前」と「決めた後」どちらが良いですか?

物件を決める前(契約前)に相談を始めるのが理想的です

物件を決める前に相談することで、金融機関や専門家から家賃の目安や立地の良し悪しについてアドバイスをもらえます。自分では適切と思っていた家賃水準も、売上目標から考えると高すぎる家賃だったということもあり得ますので、ぜひ物件を決める前に相談に行くことをおすすめします。

公庫や銀行に「借りられるだけ借りたい」と伝えるのはNGですか?

避けてください。

「借りられるだけ借りたい」という発言は、計画性の欠如や資金の使途不明確さを疑われ、審査で不利になる可能性があります。必要な資金使途(内装費、運転資金など)を明確にし、「計画を達成するために必要な金額」を具体的に伝えましょう。

公庫や銀行に「私の条件だと融資は通りますか?」と聞くのはNGですか?

NGではないですが回答はしてもらえません。

公庫も銀行も、融資の審査過程では、担当者だけでなく、審査部門からのチェックを経て審査結果が確定するため、担当者がその場で決めることはできません。担当者レベルでは、「おそらく大丈夫だろうな」と思っていても明確な回答は避けるはずですので、聞いても意味はないかと思います。

税理士に依頼する場合、費用は「成功報酬」ですか?それとも「着手金」が必要ですか?

事務所によって異なりますが、成功報酬型が多いです。

融資支援に強い多くの税理士事務所は、融資が実行された場合のみ手数料が発生する「成功報酬型」を採用しています。ただし、着手金として数万円を初期に求められる場合もあります。契約前に、「融資が否決された場合に費用が発生するかどうか」を必ず確認しましょう。

税理士に依頼したら、金融機関の面談に同席してもらえますか?

基本的には同席はないと考えてもらって良いと思います。

面談時にはあなたの個人情報に関する質問もあるため、公庫や銀行の担当者の立場に立つと出来るだけ同席は避けてもらいたいと考えているはずです。私たちの事務所では、上記のような個人情報の問題があるため、同席していませんが、代わりに面談前のシュミレーションを行い、融資面談で質問されそうな事項と、その回答を事前に練習する場を設けて、面談対策をしっかり行っています。

まとめ

いよいよ独立という夢に手をかけるあなた。創業融資の相談先選びは、その夢の実現を左右する最初の戦略です。重要なのは、あなたの「時間」と「専門性」をどこに投じるかという判断です。

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あなたの相談先タイプベストな行動と相談先融資成功への戦略
① 段取りや書類作成などは任せて他の開業準備に集中したい人向け融資に強い税理士(認定支援機関)に依頼【最速・確実】 プロに任せて、書類作成の手間と時間を完全にカット。あなたはメニュー開発や集客準備に専念し、最高の店づくりを目指す。
② 融資制度の相談はしたいが、書類作成などは自分で対応できる人向け商工会議所、よろず支援拠点、生活衛生同業組合【優遇制度活用】 公的な支援を活用し、金利優遇や経営アドバイスを得る。ただし、書類作成の遅れが全体のスケジュールを圧迫しないよう、時間管理を徹底する。
③ 他の開業準備を進めながら、創業融資の段取りを全て自分で進めたい人向け日本政策金融公庫、信用金庫や地方銀行に直接相談【最短距離】 金融機関に直接相談し、情報収集の手間を省く。相談時には、甘い点がないか審査の目線でチェックされることを覚悟し、万全の計画を持って臨む。

最も避けるべき失敗は、「書類作成に時間を取られすぎて、開業準備が疎かになること」です。融資の成功は、単に資金を得ることではなく、「あなたが作る最高の店」を予定通りにオープンさせるための手段です。

あなたの熱意と経験を、資金という確かな力に変えるため、ぜひ最適な相談先を選び、次の扉を開けてください。あなたの独立を心から応援しています!

この記事を書いた人

溝川 裕也のアバター 溝川 裕也 公認会計士・税理士・社会保険労務士・ワインエキスパート

飲食業専門の会計事務所を経営しています。

これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、創業融資支援は100件以上、補助金採択は10件以上。「料理人の可能性を引き出す」をミッションに、料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。

現在は大阪調理製菓専門学校やレコールバンタンにて、学生向けに「飲食店経営」や「お金の基礎」に関する授業も担当しています。

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