
大阪食堂サポート会計事務所代表 溝川裕也
公認会計士、税理士、社会保険労務士、ワインエキスパート
これまでに飲食店の顧問先は累計100件以上、融資支援100件以上。料理人兼オーナーを会計・税務・労務の面から支援しています。
飲食店をオープンさせる際、避けて通れないのが資金調達です。その中心となる日本政策金融公庫での融資を検討する際、多くの開業者が気にするのが「金利の負担」ではないでしょうか。
「自分が借りたら何%になるのか?」 「交渉すれば安くなるのか?」 「少しでも金利負担を減らす方法はないのか?」
結論からいうと、公庫の金利は担当者との交渉で決まるものではありません。しかし、用意されている金利軽減制度を賢く組み合わせることで、低金利で融資を受けられる可能性が十分にあります。飲食店の場合、制度を知っているかどうかで、完済までの利息負担が数十万円単位で変わることも珍しくありません。
本記事では、公庫融資の金利決定の仕組みと、あなたが使える金利軽減制度を解説していきます。最も有利な条件で資金を確保し、盤石な状態で経営をスタートさせるためのガイドとして、ぜひご活用ください。
【結論】2026年1月更新 | 飲食店の公庫創業融資の金利一覧
まずは結論として、飲食店の公庫創業融資で使える主要な金利軽減制度を使った場合の金利の目安を、直近の基準金利をもとにまとめました。
①一般的な創業融資の場合
| 雇用拡大を図る場合 | 雇用拡大なしの場合 | 備考 | |
|---|---|---|---|
| 一般的な創業融資 | 2.2%〜3.7%(中央値2.95%) | 2.45%〜3.95%(中央値3.2%) | 創業特例制度のみを利用した場合 |
②一般的な創業融資に上乗せできる制度を利用した場合
| 主な上乗せ制度 | 雇用拡大を図る場合 | 雇用拡大なしの場合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 飲食組合に加入して生産性向上の事業計画を作成する場合の創業 | 1.00%〜2.50%(中央値1.75%) | 1.25%〜2.75%(中央値2.00%) | 飲食組合に加入して融資を受ける場合 |
| 女性、若者、シニアの創業 | 1.80%〜3.30%(中央値2.55%) | 2.05%〜3.55%(中央値2.80%) | 条件に該当すれば使えます |
| 認定支援機関からの支援を受ける創業 | 1.80%〜3.30%(中央値2.55%) | 2.05%〜3.55%(中央値2.80%) | 税理士などの認定支援機関から支援を受ける場合 |
| 自治体の認定特定創業支援事業を受ける創業 | 1.80%〜3.30%(中央値2.55%) | 2.05%〜3.55%(中央値2.80%) | 自治体のセミナーなど認定特定創業支援事業を受ける場合 |
では、以下から公庫の金利決定の仕組みや、金利軽減制度の詳細を解説していきます。
日本政策金融公庫の金利が決まる仕組み

まずは前提として、公庫融資の金利がどのようにして決まるのか、その仕組みを確認しましょう。
公庫の金利は交渉では決まらない
民間の金融機関では、融資の金利は担当者との交渉や、他行との金利競合によって決まることが多々あります。しかし、政府系金融機関である公庫の融資において、担当者との金利交渉は一切意味を成しません。公庫の金利は、あらかじめ定められたルールと制度の組み合わせによって算出されます。
ただし、ここで「自分が制度を知らないと、高い金利で損をしてしまうのではないか」と不安に思う必要はありません。
公庫の担当者は、利用可能な制度の中で、最も金利が低くなる組み合わせで最適なものを適用してくれます。 創業者が無理に制度を指定せずとも、担当者がルールに則って最善の提案をしてくれるため、その点は安心して手続きを進めて大丈夫です。
公庫の金利を決める2つの決定要素
公庫の融資において、すべての土台となるのは市場金利等に連動して決まる「基準利率」です。最終的な適用金利は、この基準利率をベースとして、そこから「制度による金利の軽減」と「個別条件による調整」という2つの要素によって調整が行われ、決定されます。
公庫の融資には、一定の条件に該当すると特別利率という金利の優遇枠が適用されたり、創業や賃上げなど国の政策目標と一致するような条件だと一律に金利が軽減される制度があります。
さらに、これらの個別の軽減制度を重ねることで、ベースとなる金利をさらに引き算していくことができます。
公庫の利率一覧表を見ると、「◯%〜◯%」のように幅を持たせて表記されている場合があります。借入の総額、返済期間、創業者のその他の信用情報などを総合的に勘案して、この幅の中で金利が決定します。
飲食店が公庫の創業融資で使える金利軽減制度一覧
以下から、金利を軽減してくれる具体的な制度について解説していきます。
創業特例(創業支援貸付利率特例制度)
新たに事業を始める方や、税務申告を2期終えていない方を対象とした金利の軽減制度です。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| ▲0.65% |
- メリット
-
創業者のほとんどが自動的に対象となるため、特別なハードルなく低金利の恩恵を受けられます。また、他の金利軽減制度と併用ができます。
- デメリット
-
特になし
創業時に雇用の拡大を図る場合
創業に伴い、アルバイトや社員を雇用する計画がある場合に適用される上乗せの優遇です。ワンオペ営業や、家族従業員のみのお店の場合は使えません。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 創業特例の▲0.65%が▲0.9%に軽減幅が拡大 |
- メリット
-
他の金利軽減制度と併用ができます。
- デメリット
-
融資実行後から6ヶ月後をめどに雇用拡大の報告書の提出義務があります。計画通りに雇用拡大できていない場合は、金利の軽減が取り消しになる可能性があります。
飲食組合に加入して生産性向上の事業計画を作成する場合
飲食組合(飲食業生活衛生同業組合等の生活衛生同業組合)の組合員限定の金利の軽減制度です。組合に加入し、生産性向上のための事業計画書を作成し、組合から確認を受けることによって金利が軽減されます。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| (設備資金の場合)特別利率Cの適用(基準利率から▲0.9%)と生産性向上の軽減▲0.3%の合計で最大▲1.2%の軽減 (運転資金の場合)生産性向上の軽減▲0.3% |
- メリット
-
飲食店の公庫創業融資では最も軽減幅が大きい制度です。
- デメリット
-
入会金や毎月の組合費といったランニングコストが発生します。支払う会費と削減できる利息を天秤にかけて判断する必要があります。
飲食組合を通じた融資の段取りについては、こちらの記事を参照してください。

女性、若者、シニアの創業に該当する場合
属性そのものが優遇対象となる制度で、飲食店の創業でも頻繁に利用されます。女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)のどれかに該当すれば利用可能です。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 特別利率Aの適用(基準利率から▲0.4%) |
- メリット
-
性別や年齢という客観的な条件だけで適用されるため、複雑な手続きなしで最初から基準より低い金利が設定されます。
- デメリット
-
特になし
認定支援機関からの支援を受ける場合
税理士などの認定経営革新等支援機関の指導を受け、事業計画を策定した場合に適用される優遇制度(中小企業経営力強化資金)です。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 特別利率Aの適用(基準利率から▲0.4%) |
- メリット
-
専門家が計画作成を支援するため、融資そのものの審査通過率が高まりやすく、かつ低金利も実現できます。
- デメリット
-
年に1回、事業計画進捗報告書の提出が必要です。その際、認定支援機関による計画の確認も受ける必要があります。
自治体の認定特定創業支援事業を受ける場合
自治体と公庫が連携して創業を支援する仕組みです。市区町村が実施する創業セミナーや個別指導(特定創業支援等事業)を受け、自治体から証明書を発行してもらうことで、金利が軽減されます。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 特別利率Aの適用(基準利率から▲0.4%) |
- メリット
-
金利軽減だけでなく、補助金の上限額のアップや法人設立の登録免許税の減免などその他のメリットもあります。
- デメリット
-
複数回のセミナー受講や個別指導が必要なため、自治体からの証明書発行に1ヶ月以上は時間がかかります。融資を急いでいる場合には準備期間がネックになります。
その他の制度
上記の制度に比べて利用機会は限られるかも知れませんが、その他の制度についても紹介します。
Uターンで創業
都心(東京都、神奈川県、埼玉県および千葉県の過疎地域を除く)から、その他の地方への移転を伴う創業で適用される金利の軽減です。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 特別利率Aの適用(基準利率から▲0.4%) |
起業支援金を受けて創業
都道府県の起業支援金(補助金)の交付決定を受けている場合に併用できる金利の軽減です。当補助金は地域の社会課題に取り組む事業として飲食店を開業する場合は、該当する可能性があります。(当該補助金に対応していない都道府県もあります。また、補助金の受給には別途審査に採択される必要があります。)
| 金利の軽減効果 |
|---|
| 特別利率Bの適用(基準利率から▲0.65%) |
訪日外国人旅行者(インバウンド)対応
多言語化対応などインバウンド対応を行う場合の金利の軽減です。
| 金利の軽減効果 |
|---|
| (設備資金のみ)特別利率Bの適用(基準利率から▲0.65%) |
公庫の金利を知ることによるメリット

公庫の金利は交渉で下がるものではありませんが、その仕組みを熟知しておくことで、以下の2点のメリットがあります。
公庫の金利を知るメリット① 将来の資金繰り予測が正確になる
金利の計算方法がわかれば、借入前に毎月の返済額の正確なシミュレーションができます。金利負担を正確に織り込んだ資金繰り表を作成することで、いつまでに、いくら利益を出せば資金がショートしないかという予測精度が上がり、無理のない経営計画が立てられます。
公庫の金利を知るメリット② 他の融資制度との賢い比較ができる
飲食店の創業融資は、公庫以外にも自治体の制度融資を利用するという選択肢があります。公庫の適用利率を事前に把握していれば、他の融資制度と条件を比較して、より金利が低い窓口から優先的に、できるだけ多く借りるという戦略的な選択が可能になります。これにより、トータルの利息負担を最小限に抑えられます。
飲食店の公庫創業融資の金利に関するQ&A
- 公庫融資の金利は全て固定金利ですか?融資の途中で金利が変わる変動金利はありますか?
-
一部特殊な制度では変動する金利がありますが、飲食店の創業融資では原則として固定金利と考えてください。返済完了まで利率が変わらないため、将来にわたって安定した返済計画を立てることができます。
- 融資を受けた後に、後から金利軽減制度を適用できますか?
-
できません。金利は、融資実行時の条件で固定されます。例えば、融資を受けた後に飲食組合に加入しても、その借入の金利を下げることはできません。新たに金利軽減制度を使いたい場合は、追加の借入をするか、既存借入の借換が必要です。
- 制度融資の方が公庫の融資よりも金利が低くなる可能性はありますか?
-
あります。制度融資の場合は、金利に加えて信用保証料の負担も発生するため、合計の負担率で考える必要がありますが、自治体によっては手厚い利子負担、保証料負担がある場合があり、公庫融資よりも負担が下がる可能性はあります。
- 金利と借入金の返済はどちらも事業上の経費にできますか?
-
金利は経費に入りますが、借入金の元本返済は経費にできません。
- 開業から3年程度の経営実績を積んで、融資を借換えをすれば金利を下げることはできますか?
-
下がる可能性はありますが、下がらない可能性もあります。公庫融資は、創業時には手厚い金利の軽減制度があるため、実績を積むよりも、創業の方が金利が低くなる可能性もあります。
- 毎月の金利負担を減らすために、資金に余裕ができたら一括返済したいのですが、問題ないですか?
-
問題ありません。返済を続けていた方が信用がつくというような考え方もあるかも知れませんが、直近で新たな借入予定がない場合は、まとめて返済してしまっても問題ありません。
最後に
飲食店を開業する際は、物件の契約や内装工事、採用活動など、決めるべきことが山積みです。その中で金利の細かいルールまで完璧に把握するのは大変な作業かもしれません。
もし「自分の場合はどの制度を組み合わせるのがベストなのか?」「今の計画で本当に低金利の優遇が受けられるのか?」と不安に感じたら、まずは信頼できる税理士や、公庫の窓口、地域の飲食組合へ早めに相談してみてください。
融資は、お金を借りて終わりではありません。納得のいく金利で資金を調達し、余裕を持った資金繰りの中で、あなたのお店が地域に愛される一軒としてスタートを切れることを心より応援しています!

